本田技研工業と日産自動車の違い
一言でいうと: 二輪も手がけるホンダと、再建計画を進める日産自動車
2026年3月期は両社とも当期利益が赤字でした。ホンダは四輪EV戦略の見直し費用の計上で営業利益も赤字となり、日産自動車は営業利益は黒字を確保したものの純損失を計上しています。売上規模はホンダが大きく、平均年収・平均勤続年数でもホンダが上回ります。配当はホンダが年間70円、日産自動車は無配です。
なぜこの2社を比べるのか: 国内自動車大手同士。2026年3月期は両社とも当期利益が赤字という異例の期で、立て直しの現在地を比べます。
本田技研工業の事業の仕組み
ホンダの事業は二輪、四輪、金融サービス、パワープロダクツ及びその他の4つです。2026年3月期の売上収益は四輪事業が14兆1,669億円(14兆1,669億円)と最大ですが、営業損益は1兆4,111億円(1兆4,111億円)の損失でした。四輪EV戦略の見直しに伴う費用の計上が大きく、売上収益が最大の事業がグループ最大の赤字区分になっています。連結売上収益21兆7,966億円に対する四輪の割合は、セグメント間取引を含む売上収益ベースで約65.0%に当たります。
これに対して二輪事業は、売上収益4兆188億円(4兆188億円)と四輪の3割弱でありながら、営業利益7,319億円(7,319億円)を生み、グループ最大の利益源になりました。売上収益に対する営業利益の割合は約18.2%です。金融サービス事業は主に米国子会社を通じて小売ローンやリース等を提供し、売上収益3兆5,327億円(3兆5,327億円)、営業利益2,755億円(2,755億円)でした。発電機や耕うん機、船外機などを扱うパワープロダクツ及びその他は売上収益4,204億円(4,204億円)、営業損失107億円(107億円)です。ホンダの2026年3月期は、二輪と金融が黒字、四輪が大幅赤字という構図でした。
日産自動車の事業の仕組み
日産自動車の事業は自動車事業と販売金融事業の2つです。2026年3月期の自動車事業は売上高10兆7,602億円(10兆7,602億円)で連結売上高12兆79億円の約89.6%を占めますが、セグメント損益は2,928億円(2,928億円)の損失でした。日本・北米・欧州・アジア等で乗用車を生産・販売する本体事業が赤字という結果です。
一方、販売金融事業は各国の販売金融子会社が自動車購入者向けのローンやリース等を提供する事業で、売上高1兆2,475億円(1兆2,475億円)と連結の約10.4%にとどまりながら、セグメント利益は2,979億円(2,979億円)に達しました。売上高に対する割合は約23.9%です。自動車事業の損失2,928億円と販売金融事業の利益2,979億円がほぼ同規模で相殺し合い、連結の営業利益580億円の黒字につながった形です。ホンダが二輪で四輪の赤字を補う構図なのに対し、日産は自動車に付随する金融で自動車の赤字を補う構図になっています。
| 項目 | 本田技研工業 | 日産自動車 |
|---|---|---|
| 売上高 | 21兆7,966億円(2026年3月期) | 12兆79億円(2026年3月期) |
| 営業利益 | -4,143億円(2026年3月期) | 580億円(2026年3月期) |
| 営業利益率 | -1.9%(2026年3月期) | 0.5%(2026年3月期) |
| 当期利益 | -4,239億円(2026年3月期) | -5,331億円(2026年3月期) |
| 時価総額 | 8兆982億円(2026-10-30時点) | 9,905億円(2026-10-30時点) |
| ROE | -3.5%(2026年3月期) | —(未確認) |
| 自己資本比率 | 35.3%(2026年3月期) | 24.2%(2026年3月期) |
| 有利子負債 | 13兆4,799億円(2026年3月期) | —(未確認) |
| 現金及び現金同等物 | 5兆1,185億円(2026年3月期) | —(未確認) |
| 売上高(予想) | 23兆1,500億円(2027年3月期 通期予想(決算短信)) | 13兆円(2027年3月期 通期予想(決算短信)) |
| 年間配当 | 70円(2026年3月期) | 0円(2026年3月期) |
| 配当利回り | 3.91%(2026-10-30時点) | 0%(2026-10-30時点) |
| 平均年収 | 933万円(2026年3月期(提出会社単体の平均年間給与)) | 857.1万円(2026年3月期(提出会社単体の平均年間給与)) |
| 平均年齢 | 43.9歳(2026年3月期(提出会社単体)) | 40.9歳(2026年3月期(提出会社単体)) |
| 平均勤続年数 | 21年(2026年3月期(提出会社単体)) | 14.9年(2026年3月期(提出会社単体)) |
| 従業員数(連結) | 195,109人(連結従業員数(2026年3月期)) | 120,079人(連結従業員数(2026年3月期)) |
| 決算月 | 3月 | 3月 |
| 創業 | 1948年9月24日 | 1933年12月26日 |
| 本社 | 東京都港区南青山二丁目1番1号 | 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 |
| 証券コード | 7267 | 7201 |
対象期は原則として両社とも2026年3月期の数値です。
売上高
営業利益
営業利益率
当期利益
時価総額
ROE
自己資本比率
有利子負債
現金及び現金同等物
売上高(予想)
年間配当
配当利回り
平均年収
平均年齢
平均勤続年数
従業員数(連結)
決算月
創業
本社
証券コード
グラフで比べる
2社の違いを読み解く
2026年3月期のホンダは、利益を生んだ事業と損失を出した事業がはっきり分かれました。売上収益が最大の四輪事業は14兆1,669億円の売上に対し営業損失1兆4,111億円と、EV関連費用の計上で大幅な赤字になりました。一方、二輪事業は売上収益4兆188億円と四輪の3分の1以下でありながら営業利益7,319億円を生み、グループ最大の利益源になっています。金融サービス事業も営業利益2,755億円と黒字でした。
日産自動車も自動車事業自体は赤字でしたが、その構図は異なります。自動車事業は売上高10兆7,602億円でセグメント損失2,928億円、販売金融事業は売上高1兆2,475億円でセグメント利益2,979億円と、自動車販売に付随する金融が連結の営業利益の黒字を支えました。つまりホンダは「二輪が四輪の赤字を補う」構図、日産は「販売金融が自動車の赤字を補う」構図です。
立て直しの進め方にも差があります。日産は経営再建計画「Re:Nissan」のもと、2027年度までに全世界で2万人の人員削減、生産工場の17から10への削減、生産能力の350万台から250万台への縮小(中国を除く)を進めています。ホンダの掲載情報にあるのは四輪EV戦略の見直しに伴う減損損失5,214億円・除却損失3,314億円を含む費用計上であり、生産体制の縮小計画は示されていません。成り立ちでは、ホンダが1948年に本田宗一郎が創業し1949年に二輪車の生産から始めたのに対し、日産は1933年の設立で、1999年にルノーと資本提携した経緯を持ちます。
事業の仕組みの面では、利益率の置かれ方にも違いがあります。二輪事業は売上収益4兆188億円に対する営業利益が7,319億円で割合は約18.2%に達するのに対し、日産の販売金融事業も売上高1兆2,475億円に対するセグメント利益が2,979億円で約23.9%と高い割合を示します。つまり両社とも、本体の自動車販売そのものではなく、そこから派生する別の事業が高い利益率でグループを支えた期でした。ただしホンダの支えは車両事業である二輪、日産の支えは販売に付随する金融と、事業の性質は異なります。赤字の補い方が製品の多角化によるものか、金融によるものかという違いが、2社の事業構造の違いを最も端的に表しています。
違いのポイント
- ホンダは二輪事業の営業利益7,319億円が最大の利益源で、四輪事業は営業損失1兆4,111億円
- 日産は自動車事業がセグメント損失2,928億円、販売金融事業がセグメント利益2,979億円と黒字を支えた
- ホンダの二輪は売上収益4兆188億円と四輪14兆1,669億円の3分の1以下で、四輪を上回る利益を出した
- 日産は「Re:Nissan」で人員2万人削減、工場17→10、生産能力350万台→250万台(中国除く)を進める
- ホンダはEV戦略見直しで減損損失5,214億円・除却損失3,314億円を含む費用を計上した
戦略・中期経営計画の違い
立て直しの進め方には明確な差があります。日産自動車は経営再建計画「Re:Nissan」のもと、2027年度までに全世界で2万人の人員削減、生産工場の17から10への削減、生産能力の350万台から250万台への縮小(中国を除く)を進めています。人員、工場数、生産能力という生産体制そのものに数値目標を置く計画です。
ホンダについては、ブリーフに掲載されているのは四輪EV戦略の見直しに伴う費用の計上であり、生産体制の縮小計画は示されていません。米国でのEV市場拡大の鈍化や中国での競争激化を受けて一部のEVモデルの上市・開発中止や生産終了を決定し、売上原価に1兆479億円(1兆479億円)、研究開発費に3,979億円(3,979億円)等の損失・費用を認識したほか、減損損失5,214億円(5,214億円)、除却損失3,314億円(3,314億円)を計上しています。日産が体制の縮小計画を前面に出すのに対し、ホンダは電動化投資の見直し費用を当期に計上する形で表れている点が違いです。
財務と株主還元
2026年3月期は両社とも当期利益が赤字でした。ホンダは営業損失4,143億円(4,143億円)、当期損失4,239億円(4,239億円)で、営業利益率はマイナス1.9%、ROEはマイナス3.5%です。日産自動車は営業利益580億円(580億円)と黒字を確保し営業利益率は0.5%でしたが、構造改革に伴う特別損失の計上で当期純損失は5,331億円(5,331億円)となりました。営業段階ではホンダが赤字・日産が黒字、最終損益では日産の赤字額の方が大きいというねじれがあります。自己資本比率はホンダが35.3%、日産は24.2%です。ホンダの有利子負債は13兆4,799億円、現金同等物は5兆1,185億円です。なお日産の有利子負債やROEはブリーフに掲載されていません。
株主還元では対応が分かれました。ホンダは赤字決算でも年間配当70円を維持し、2026年10月30日時点の配当利回りは3.91%でした。日産自動車は年間配当0円の無配で、配当利回りは0%です。時価総額はホンダが80,982億円、日産が9,905億円と大きな差があります。2027年3月期の通期予想では、ホンダが売上収益23兆1,500億円、営業利益5,000億円、当期利益2,600億円、日産が売上高13兆円、営業利益2,000億円、当期利益200億円と、両社とも黒字への回復を予想として示していますが、あくまで会社予想の数値です。
人と組織
人と組織では、連結従業員数はホンダが195,109人(2026年3月期)、日産自動車が120,079人(同)で、ホンダが約7.5万人多くなっています。提出会社単体の平均年間給与はホンダが933万円、日産が857.1万円でホンダが約76万円高く、平均年齢はホンダが43.9歳、日産が40.9歳、平均勤続年数はホンダが21年、日産が14.9年でホンダが6.1年長くなっています。掲載されている3つの単体指標すべてでホンダの数値が高く出ています。なお日産の地域別の連結従業員数は日本58,723人、北米37,036人、欧州8,948人、アジア9,890人、その他5,482人とブリーフに掲載されています。
沿革から見る現在地
成り立ちの違いは、現在の事業構成にもつながっています。ホンダは1948年に本田技研工業を設立、1949年に二輪車の生産から始めて、1963年に四輪車の生産を開始しました。二輪から始めた会社であることが、2026年3月期に二輪事業がグループ最大の利益源になった構図と重なります。日産自動車は1933年に設立され、1999年にフランスのルノーと資本提携し、2016年に三菱自動車工業へ資本参加、2023年にルノー・日産・三菱自動車のアライアンスの新契約を締結した経緯を持ちます。アライアンスの歴史を持つ点が、単独で二輪から広がったホンダとの違いです。
読むときの注意点
- 2026年3月期は両社とも当期利益が赤字の異例の期です。ホンダの四輪の赤字にはEV戦略見直しに伴う減損損失5,214億円・除却損失3,314億円を含む巨額費用が含まれ、日産の純損失には構造改革に伴う特別損失が含まれます。単年度の損益だけで通常の収益力を判断しないよう注意が必要です。
- 利益を支える区分への依存が両社とも大きくなっています。ホンダは二輪事業の営業利益7,319億円、日産は販売金融事業のセグメント利益2,979億円が、本体事業の赤字を補う構図です。
- 日産は「Re:Nissan」で2027年度までに2万人削減、工場17から10への削減、生産能力350万台から250万台への縮小(中国を除く)を掲げています。計画の数値であり、実行の進み具合は今後の開示で確認する必要があります。
- セグメントの分け方が両社で異なります。ホンダは4区分、日産は2区分であり、区分同士を直接対応させることはできません。
まとめ
まとめると、2026年3月期の両社は、本体事業が赤字で付随する事業が利益を支えるという似た構図を持ちながら、その中身が異なります。ホンダは売上収益21.8兆円の規模を持ち、二輪の営業利益7,319億円が四輪の赤字を補い、赤字でも配当70円を維持しました。日産は売上高12.0兆円で、販売金融の利益2,979億円が自動車の損失を補って営業黒字を確保したものの純損失5,331億円となり、無配のうえ生産体制の縮小を含む再建計画を進めています。規模、還元、立て直しの打ち手の違いが要点です。
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数字の出典と確認日は各社の企業ページに記載しています(この比較の確認日: 2026/11/02)。