ENEOSホールディングスと出光興産の違い
一言でいうと: 売上収益11兆円超のENEOSホールディングスと、燃料油に集中する出光興産
2026年3月期の売上収益はENEOSホールディングス11兆7,655億円、出光興産8兆1,059億円と約1.45倍の差があります。営業利益率はENEOSが4.0%、出光が2.6%ですが、ROEは出光が9.4%とENEOSの8.0%を上回ります。提出会社単体の平均年間給与はENEOS1,138万円、出光995万円です。
なぜこの2社を比べるのか: 石油元売り大手同士の比較です。どちらも燃料油・石油製品が売上の中心ですが、売上規模で約1.45倍の差があり、利益の出ている事業の顔ぶれや財務の形も異なります。統合の積み重ね方も対照的です。
ENEOSホールディングスの事業の仕組み
ENEOSホールディングスは持株会社で、連結子会社は476社です。事業は石油製品ほか、石油・天然ガス開発、機能材、電気、再生可能エネルギー、その他の6つで、2026年3月期の売上収益は石油製品ほか事業10兆3,953億円が約9割を占め、セグメント利益も2,924億円と最大です(いずれもセグメント間取引含む)。中核は石油精製・販売を担うENEOS株式会社です。
石油製品以外の利益の柱は、その他事業の928億円と石油・天然ガス開発事業の508億円です。開発事業は売上収益2,167億円に対して利益が大きく、売上規模の割に利益への寄与が目立ちます。一方、電気事業は売上収益3,492億円・利益220億円、機能材事業は3,390億円・利益111億円、再生可能エネルギー事業は487億円で9億円の損失と、非石油事業の利益水準は事業ごとにばらついています。
先行きの開示では、2027年3月期の業績予想として売上収益12兆8,500億円、営業利益6,100億円、当期利益4,150億円が示されています。また第4次中期経営計画の重点施策「ポートフォリオ再編」の一環として、東南アジア・オセアニア6ヵ国におけるChevronグループの燃料油・潤滑油販売事業の取得契約を締結しており、2026年5月には自己株式の取得と消却を取締役会で決議しています。
出光興産の事業の仕組み
出光興産の事業は燃料油、基礎化学品、高機能材、電力・再生可能エネルギー、資源、その他の6区分です。2026年3月期は燃料油事業が売上高6兆7,934億円・セグメント利益1,777億円と最大で、連結売上高8兆1,059億円の約84%を占めます。なお出光のセグメント利益は、営業利益に持分法投資損益を加えたものと定義されています。
燃料油以外では、高機能材事業が売上高5,032億円・利益334億円、資源事業が2,035億円・利益331億円と、売上規模の異なる2事業の利益がほぼ並びます。基礎化学品事業は売上高4,914億円ながら68億円の赤字で、2026年3月期にはバイオマス関連設備等98億円など、複数セグメントで減損損失も計上しています。地域別売上高は日本5兆5,572億円、海外が約31.4%です。
出光興産は2026年5月に2026〜2030年度の中期経営計画を公表しています。2027年3月期の年間配当は36円を予定し、同年期からIFRSを任意適用します。事業面の直近の動きとしては、2025年11月の富士石油の連結子会社化があり、燃料油事業の供給体制に関わる変化として決算短信に記されています。
| 項目 | ENEOSホールディングス | 出光興産 |
|---|---|---|
| 売上高 | 11兆7,655億円(2026年3月期) | 8兆1,059億円(2026年3月期) |
| 営業利益 | 4,666億円(2026年3月期) | 2,122億円(2026年3月期) |
| 営業利益率 | 4%(2026年3月期) | 2.6%(2026年3月期) |
| 当期利益 | 2,587億円(2026年3月期) | 1,719億円(2026年3月期) |
| 時価総額 | 3兆8,047億円(2026-10-30時点) | 1兆8,538億円(2026-10-30時点) |
| PER | 14.83倍(2026-10-30時点) | 10.79倍(2026-10-30時点) |
| ROE | 8%(2026年3月期) | 9.4%(2026年3月期) |
| 自己資本比率 | 37.1%(2026年3月期) | 36%(2026年3月期) |
| 有利子負債 | 2兆1,915億円(2026年3月期) | 1兆3,623億円(2026年3月期) |
| 現金及び現金同等物 | 8,773億円(2026年3月期) | 1,571億円(2026年3月期) |
| 売上高(予想) | 12兆8,500億円(2027年3月期 通期予想(決算短信)) | —(未確認) |
| 年間配当 | 34円(2026年3月期) | 36円(2026年3月期) |
| 配当利回り | 2.38%(2026-10-30時点) | 2.37%(2026-10-30時点) |
| 平均年収 | 1,138万円(2026年3月期(提出会社単体の平均年間給与)) | 995万円(2026年3月期(提出会社単体の平均年間給与)) |
| 平均年齢 | 43.8歳(2026年3月期(提出会社単体)) | 42.9歳(2026年3月期(提出会社単体)) |
| 平均勤続年数 | 17.4年(2026年3月期(提出会社単体)) | 17.5年(2026年3月期(提出会社単体)) |
| 従業員数(連結) | 34,099人(連結従業員数(2026年3月期)) | 14,392人(連結従業員数(2026年3月期)) |
| 決算月 | 3月 | 3月 |
| 創業 | 2010年4月1日 | 1940年3月30日設立 |
| 本社 | 東京都千代田区大手町一丁目1番2号 | 東京都千代田区大手町一丁目2番1号 |
| 証券コード | 5020 | 5019 |
対象期は原則として両社とも2026年3月期の数値です。
売上高
営業利益
営業利益率
当期利益
時価総額
PER
ROE
自己資本比率
有利子負債
現金及び現金同等物
売上高(予想)
年間配当
配当利回り
平均年収
平均年齢
平均勤続年数
従業員数(連結)
決算月
創業
本社
証券コード
グラフで比べる
2社の違いを読み解く
ENEOSホールディングスは6事業を持ち、2026年3月期は石油製品ほか事業が売上収益10兆3,953億円、セグメント利益2,924億円と、売上の約9割を占める最大事業です(セグメント間取引含む)。残りはその他事業5,200億円、電気事業3,492億円、機能材事業3,390億円、石油・天然ガス開発事業2,167億円、再生可能エネルギー事業487億円と続きます。利益ではその他事業928億円、開発事業508億円が石油製品ほか事業に次ぎ、再生可能エネルギー事業は9億円のセグメント損失でした。
出光興産も燃料油が中心で、2026年3月期の燃料油事業は売上高6兆7,934億円と連結売上高の約84%、セグメント利益1,777億円でした。高機能材事業5,032億円、基礎化学品事業4,914億円、資源事業2,035億円が続きますが、基礎化学品事業は68億円の赤字、電力・再生可能エネルギー事業も18億円の赤字です。地域別では日本5兆5,572億円に対し海外が約31.4%で、ENEOSには地域別の売上開示が掲載されていない点も、開示の形の違いとして表れています。
成り立ちは対照的です。ENEOSは2010年に新日本石油と新日鉱ホールディングスの経営統合で発足したJXホールディングスが起源で、2017年に東燃ゼネラル石油と統合、2020年に現社名になりました。2025年にはJX金属の上場に伴い金属事業が非継続事業となり、再編が進んでいます。出光興産は1911年に出光商会として創業した会社で、2019年に昭和シェル石油の全事業を承継し、2025年11月には公開買付けで富士石油を連結子会社化しました。
数字を掘ると、規模の差と利益率の差は比例しません。2026年3月期の営業利益はENEOS4,666億円(↑ 前期比339.8%増、在庫影響を除くと4,745億円)、出光2,122億円(同30.8%増)で、営業利益率は4.0%対2.6%です。一方でROEは出光9.4%がENEOS8.0%を上回ります。自己資本比率は37.1%対36.0%と近接しますが、有利子負債はENEOS2兆1,915億円、出光1兆3,623億円、現金及び現金同等物はENEOS8,773億円、出光1,571億円と、財務の絶対額には規模差がそのまま出ています。
違いのポイント
- 2026年3月期の売上収益はENEOS11兆7,655億円、出光8兆1,059億円で約1.45倍の差
- ENEOSは石油製品ほか事業が売上収益10兆3,953億円と約9割、出光は燃料油事業が6兆7,934億円と約84%を占める
- 営業利益率はENEOS4.0%対出光2.6%だが、ROEは出光9.4%がENEOS8.0%を上回る(2026年3月期)
- 出光の基礎化学品事業は2026年3月期に68億円の赤字、電力・再生可能エネルギー事業も18億円の赤字
- ENEOSは2025年にJX金属が持分法適用会社となり金属事業が非継続事業に、出光は2025年に富士石油を連結子会社化した
財務と株主還元
2026年3月期の収益性は、営業利益率でENEOS4.0%、出光2.6%とENEOSが上回り、営業利益額は4,666億円対2,122億円です。ただしENEOSの営業利益は↑ 前期比339.8%増と大きく伸びた期であり、出光も当期純利益が↑ 前期比65.2%増の1,719億円でした。ROEは出光9.4%、ENEOS8.0%と順序が逆転します。
財務面では自己資本比率がENEOS37.1%、出光36.0%と近い一方、有利子負債はENEOS2兆1,915億円、出光1兆3,623億円、現金及び現金同等物はENEOS8,773億円、出光1,571億円です。株主還元は年間配当ENEOS34円(配当性向35.4%)、出光36円(同25.6%)で、2026年10月30日時点のスナップショットでは時価総額ENEOS3兆8,047億円、出光1兆8,538億円、PERは14.83倍対10.79倍でした。
総資産はENEOS9兆943億円、出光5兆3,288億円、自己資本(資本合計)はENEOS3兆3,698億円、出光1兆9,181億円です。2027年3月期予想は、ENEOSが売上収益12兆8,500億円・営業利益6,100億円・当期利益4,150億円と3項目そろうのに対し、出光はIFRS任意適用に伴い当期利益750億円のみが示されており、予想同士の単純比較はできない形になっています。
人と組織
連結従業員数はENEOS34,099人、出光14,392人(2026年3月期)と2倍以上の差があります。提出会社単体の平均年間給与はENEOS1,138万円、出光995万円で143万円の差があり、平均年齢は43.8歳対42.9歳、平均勤続年数は17.4年対17.5年と近接します。ただしENEOSの単体従業員数は持株会社の1,207人、出光は5,120人と単体の位置づけが異なるため、年収の単純比較には注意が必要です。
平均年間給与の原数値は、ENEOSホールディングスが11,376,982円、出光興産が9,952,943円です(2026年3月期の有価証券報告書)。ENEOSは持株会社単体の数値であるのに対し、出光は事業会社本体の単体数値という違いがあるため、差143万円は組織形態の違いを含んだ数字として読むのが適切です。
沿革から見る現在地
ENEOSホールディングスは、2010年に新日本石油と新日鉱ホールディングスの経営統合で設立されたJXホールディングスが起源です。2017年に東燃ゼネラル石油を完全子会社化してJXTGホールディングスとなり、2020年に現社名へ変更しました。2025年にはJX金属の新規上場に際して保有株式の一部を売り出し、同社は子会社から持分法適用会社となっています。
出光興産は1911年に出光商会を創設、1940年に株式会社を設立し、2006年に上場しました。2019年に昭和シェル石油の全事業を承継して経営統合し、2025年11月には公開買付けにより富士石油を連結子会社化しています。統合で規模を広げてきたENEOSと、創業家系の単独企業が出発点で後から統合を重ねた出光という、歩みの違いがあります。
読むときの注意点
- 会計基準が異なります。ENEOSホールディングスはIFRS、出光興産は2026年3月期が日本基準で、2027年3月期からIFRSを任意適用します。出光の2027年3月期予想は当期利益750億円のみが示され、日本基準の実績と直接比較できない旨が決算短信に記されています。
- セグメント利益の定義も揃っていません。ENEOSの数値はセグメント間取引を含み、出光のセグメント利益は営業利益に持分法投資損益を加えたものです。またENEOSの営業利益には在庫影響が含まれ、在庫影響を除いた営業利益は4,745億円と別に開示されています。
まとめ
まとめると、ENEOSホールディングスは売上収益11兆7,655億円と規模で大きく上回り、石油製品以外の事業やその他事業にも利益の柱があります。出光興産は燃料油への集中度が約84%とより高く、営業利益率は2.6%と低い一方、ROE9.4%ではENEOSを上回ります。同じ石油元売りでも、統合の履歴、事業の広がり、利益の出どころが異なることが数字に表れた比較です。
見るべき点は、ENEOSのポートフォリオ再編の進み方と、出光の燃料油事業の利益水準、そして両社とも営業利益が前期から大きく伸びた2026年3月期の水準が続くかどうかです。いずれも決算短信と有価証券報告書の開示範囲で確認できる範囲にとどめて判断する必要があります。
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数字の出典と確認日は各社の企業ページに記載しています(この比較の確認日: 2026/11/05)。