海外進出の成功談はよく語られますが、決算書に残るのはむしろ失敗の記録です。ここでは各社の決算短信で確認できる3つの事例から、つまずきのパターンを読みます。他媒体の失敗事例まとめではなく、一次情報に残った記録だけを使います。
電通グループ: 海外M&Aそのものの見直し
電通グループは2025年12月期に、海外事業を中心に減損損失4,026億円を計上し、親会社の所有者に帰属する当期損失3,276億円と過去最大の赤字になりました。単体決算の分配可能額が大幅なマイナスとなったため、同12月期の配当は上場以来初の無配としています(決算短信)。減損の中心は、海外企業を買収したときに生じた「のれん」です。
のれんとは、買収価格のうち相手企業の純資産を超えて払った部分、つまり「将来の稼ぐ力への前払い」です。期待した収益が出ないと判断されると、のれんは減損として一気に費用化されます。買収の成否は、買った日ではなく、数年後の決算で判定されるということです。
DIC: 中国の事業会社を譲渡して撤退
DICは、長期経営計画で構造改革事業と位置付けていたTFT液晶材料事業から撤退し、連結子会社の青島迪愛生精細化学有限公司と青島迪愛生液晶有限公司の出資持分全部を2025年9月24日に譲渡しました(決算短信)。市場そのものの変化に合わせて、事業の存続ではなく譲渡による出口を選んだ事例です。
ASTI: 中国のワイヤーハーネス事業から撤退
ASTIは中国でのワイヤーハーネス事業から撤退し、2026年3月期に事業整理損9億円を特別損失として計上しました(決算短信。固定資産売却益6億円の計上も併記されています)。大企業だけでなく、中堅メーカーでも海外拠点の整理は決算に直結します。
失敗の記録から読めること
- 海外買収の価格には「のれん」が含まれ、期待外れは減損として数年後に表面化する
- 撤退は「譲渡」「清算」「事業整理損」といった言葉で決算短信に現れる
- 減損は現金の支出ではないが、過去の投資判断の結果として読むことができる
海外展開の良し悪しは、進出のニュースではなく、その後の決算で確かめるものです。当サイトの企業ページでは、各社の失敗と撤退の記録を「トホホな失敗と、そこからの教訓」に出典つきでまとめています。
関連する企業
出典
- 電通グループの企業ページ(原典は2025年12月期決算短信〔IFRS〕・公式発表) (2026/11/02確認)
- DICの企業ページ(原典は2025年12月期決算短信) (2026/11/02確認)
- ASTIの企業ページ(原典は2026年3月期決算短信) (2026/11/02確認)
参考リンク(姉妹サイト)
- 英語の動画で学ぶ(manapick) — 海外事業の現場で使われる英語を動画で学ぶ