JR東海の営業利益率は41.4%。同じ鉄道会社のはずのJR西日本は10.7%です(いずれも2026年3月期)。電力会社でも、北陸電力の11.1%と沖縄電力の4.2%では大きな差があります。同じ業種なのに、なぜこれほど「稼ぎ方」が違うのか。上場しているJR4社と電力9社を、決算の数字とセグメント情報で比べます。
JR4社 — 東海の 突出と、 その理由
グラフの数値をテキストで見る(4件)
- JR東海 — 売上高2兆62億円、営業利益8,302億円、営業利益率41.4%
- JR九州 — 売上高5,004億円、営業利益740億円、同14.8%
- JR東日本 — 売上高3兆847億円、営業利益4,143億円、同13.4%
- JR西日本 — 売上高1兆8,458億円、営業利益1,981億円、同10.7%
鍵はセグメント(事業分野別)の内訳です。JR東海の決算短信(2026年3月期)では、運輸業の営業収益は1兆6,539億円で連結全体の約82%、営業利益は7,674億円で連結の約92%を占めます。運輸業だけの利益率は約46%です。東海道新幹線という、首都圏と関西を結ぶ高需要の幹線をほぼ一手に担う構造が、この数字を作っています。不動産や流通などの非運輸事業は、利益の1割にも届きません。
売上規模で見ると、4社最大なのはJR東日本(3兆847億円)で、JR東海(2兆62億円)、JR西日本(1兆8,458億円)と続きます。ところが営業利益では、東海の8,302億円が東日本の4,143億円のほぼ2倍です。売上の順位と利益の順位が完全に入れ替わっているのが、JRの決算の最大の特徴です。首都圏の巨大な輸送需要と駅資産を持つ東日本と、東海道新幹線という一本の強い線路を持つ東海。どちらも大きな会社ですが、「何で稼ぐか」の設計がまるで違うのです。
対照的なのがJR東日本です。運輸事業の売上高は2兆458億円で連結の約66%、営業利益は1,944億円で連結の約47%にとどまります。残りの利益は、不動産・ホテル事業(営業利益1,282億円)や流通・サービス事業(同680億円)が稼いでいます。首都圏の駅ビルや商業施設、ホテルといった「駅とその周辺の資産」を収益化する分散型の構造です。JR西日本とJR九州も、鉄道に加えて不動産・流通・観光などを組み合わせる点では東日本に近い形です。
JR東海の非運輸事業を見ると、集中型であることがさらに際立ちます。同社の「その他」セグメントは営業収益2,919億円・営業利益244億円、流通業は1,830億円・158億円、不動産業は957億円・252億円です。連結の営業収益2兆62億円に対して、運輸業以外は合わせて2割に届きません。JR東日本が不動産・ホテル事業だけで1,282億円の営業利益を稼ぐのと比べると、同じJRでも収益の作り方が根本から違うことが分かります。
なお、JRグループのうちJR北海道、JR四国、JR貨物は上場しておらず、当サイトのデータにも収録されていません。国鉄分割民営化の際に経営基盤の弱さが見込まれた会社が含まれており、上場4社だけを見て「JRの稼ぎ方」を一般化はできない点に注意してください。
電力9社 — 利益率の 差と電源構成
グラフの数値をテキストで見る(6件)
- 北陸電力 — 売上高7,866億円、営業利益875億円、営業利益率11.1%
- 関西電力 — 売上高4兆566億円、営業利益4,376億円、同10.8%
- 四国電力 — 売上高7,619億円、営業利益678億円、同8.9%。北海道電力は8.6%
- 東北電力6.8%、中部電力6.5%、中国電力6.3%が中位
- 東京電力ホールディングス — 売上高6兆3,286億円で最大だが、同5.3%
- 沖縄電力 — 売上高2,202億円、営業利益93億円、同4.2%で最も低い
電力会社の利益は、売上規模では決まりません。最大の売上を持つ東京電力が中位以下の利益率である一方、小規模な北陸電力が首位です。差を生む大きな要因の一つが「電源構成」——何で発電するかです。燃料を燃やす火力は燃料価格に左右されますが、水力と原子力は燃料費が小さい分、動かせれば利益が出やすい構造があります。
公式資料で確認できる例を挙げます。関西電力の電源構成(2024年度実績、自社発電)は原子力48%、LNG29%、水力13%、石炭9%で、原子力が半分近くを占めます(同社統合報告書)。北陸電力は公式サイトで「水力発電比率は旧一般電気事業者の中ではトップ」と説明しており、北陸の水資源を生かした電源構成が特徴です。全国平均は、資源エネルギー庁の統計で火力68.6%、再生可能エネルギー22.9%、原子力8.5%(2023年度の発電電力量構成)であり、各社の電源構成はこの平均から大きく散らばっています。
全国の姿として、資源エネルギー庁の統計では、2023年度の電源構成は火力68.6%・再生可能エネルギー22.9%・原子力8.5%で、原子力と再生可能エネルギーを合わせた非化石電源の比率は31.4%となり、東日本大震災の後で初めて30%を超えました(同庁公表)。各社の利益率の差は、この全国平均からどれだけ電源構成がずれているかと重ねて見ると、読みやすくなります。原子力と水力の比重が高い会社は燃料費の重さから逃れやすく、火力中心の会社は燃料価格と為替に利益を左右されやすいのです。
もう一つの要因は、供給エリアの需要と料金です。離島を多く抱え、規模の小さい沖縄電力は、発電コストが割高になりやすい構造です。電力は自由化が進んだとはいえ、各社の土台となる電源と商圏は歴史的に決まっており、「稼ぎ方」の差は一朝一夕には埋まりません。
JR九州は、規模は4社で最小(売上高5,004億円)ながら、営業利益率は14.8%と2番手です。740億円の営業利益を、東日本の7分の1の売上規模で稼いでいます。不動産や流通、ホテルを含む事業構成で、鉄道単体に依存しない稼ぎ方をしてきた結果と読めます。売上規模の順位と利益率の順位は、JRでも電力でも一致しません。規模の大きさは「稼ぐ力」の保証ではないのです。
規模の差も極端です。沖縄電力の売上高2,202億円は、東京電力ホールディングスの6兆3,286億円の約29分の1しかありません。同じ「電力会社」という括りでも、商圏の大きさが30倍近く違うのです。小さい会社ほど発電設備を分散できず、1基のトラブルや燃料価格の変動が利益全体に響きやすい構造があります。利益率の差を見る際は、この規模の違いも一緒に頭に入れておく必要があります。
比べる ときの見方
- 鉄道 — 利益率だけでは測れない。幹線の条件(東海道新幹線の有無)と、非運輸事業の育ち具合で構造が決まる。セグメント別の利益の出どころを見る
- 電力 — 売上の大きさと利益率は連動しない。電源構成(原子力・水力・火力の比率)と、燃料価格や再稼働の状況が利益を左右する
- 共通点 — どちらも「免許と設備の産業」。歴史的に与えられた路線網・電源・商圏という初期条件が、現在の稼ぎ方の差になっている
JRにも電力にも、「同じ業種なのに稼ぎ方が違う」会社が並んでいます。その差の多くは経営の巧拙だけでは説明できず、持っている路線と電源という資産の条件から生まれています。決算を読むときは、利益率の高い・低いの前に、その会社がどんな資産で稼いでいるのかを確認してみてください。
関連する企業(8社)
出典(5件)
- JR東日本 2026年3月期 決算短信(セグメント別売上高・営業利益、JPX開示) (2026/11/05確認)
- JR東海 2026年3月期 決算短信(セグメント別営業収益・営業利益、同社公式) (2026/11/05確認)
- 関西電力グループ「統合報告書2025」(電源構成:原子力48%、2024年度実績) (2026/11/05確認)
- 北陸電力 公式サイト「日本の電源構成(エネルギー・ミックス)」(水力比率が旧一般電気事業者でトップとの説明) (2026/11/05確認)
- 資源エネルギー庁「2023年度エネルギー需給実績」(発電電力量構成:火力68.6%、再エネ22.9%、原子力8.5%) (2026/11/05確認)