東京海上ホールディングスとMS&ADインシュアランスグループホールディングスの違い
一言でいうと: 海外保険を大きな柱とする東京海上HDと、国内2大損保を擁するMS&AD
2026年3月期の経常収益は東京海上ホールディングス8兆8,723億円がMS&ADインシュアランスグループホールディングス7兆6,530億円を上回り、当期純利益も9,804億円対7,873億円です。一方で増減率ではMS&ADが経常利益20.6%増と伸び、東京海上は7.6%減と対照的でした。時価総額は2026年10月30日時点で東京海上16兆8,084億円がMS&AD7兆8,478億円の約2.1倍です。
なぜこの2社を比べるのか: 国内損害保険の大手2グループです。東京海上ホールディングスは海外保険の経常収益が連結の過半を占める構成、MS&ADは三井住友海上とあいおいニッセイ同和という2つの中核損保を擁する構成と、グループの作り方が異なります。規模、海外の置き場、利益の伸びの違いを比べます。
東京海上ホールディングスの事業の仕組み
東京海上ホールディングスの事業は国内損害保険、国内生命保険、海外保険、ソリューション・その他の4事業です。保険会社の決算には営業利益に相当する科目がないため、ここでは経常収益とセグメント利益で示します。2026年3月期の国内損害保険事業は東京海上日動火災保険、日新火災海上保険、東京海上ダイレクト損害保険が担い、経常収益3兆7,903億円(3兆7,903億円)、セグメント利益7,445億円(7,445億円)と利益では最大の事業です。
海外保険事業は北米のPhiladelphia、Delphi Financial、HCC、英国のTokio Marine Kiln、アジアのTokio Marine Asiaなどを通じ、経常収益4兆5,999億円(4兆5,999億円)、セグメント利益5,591億円(5,591億円)と収益では最大の事業になっています。公式サイトでは56の国・地域に展開するとしています。国内生命保険事業は東京海上日動あんしん生命保険が担い経常収益7,962億円・セグメント利益236億円、建設コンサルタントや防災・減災等を含むソリューション・その他事業は経常収益2,856億円・セグメント利益214億円でした。
MS&ADインシュアランスグループホールディングスの事業の仕組み
MS&ADインシュアランスグループホールディングスは、三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険の2つの中核損保に、三井ダイレクト損害保険と生命保険2社を擁します。事業別数値は売上高が正味収入保険料・生命保険料等、セグメント利益が当期純利益ベースで開示されます。2026年3月期は三井住友海上が売上高1兆6,256億円(1兆6,256億円)・セグメント利益4,599億円(4,599億円)、あいおいニッセイ同和が売上高1兆3,425億円(1兆3,425億円)・セグメント利益1,087億円(1,087億円)でした。
海外事業は売上高1兆9,228億円(1兆9,228億円)・セグメント利益2,619億円(2,619億円)で、公式サイトでは海外展開国を48ヶ国とし、ASEAN諸国では域内損害保険会社としてトップクラスのマーケットシェアを有するとしています。生命保険では三井住友海上プライマリー生命保険が売上高1兆1,771億円・セグメント利益257億円、三井住友海上あいおい生命保険が売上高4,632億円・セグメント利益296億円です。なお三井住友海上とあいおいニッセイ同和は、2027年4月に両社の合併による新会社『三井住友海上あいおい損害保険』の発足を予定しています。
| 項目 | 東京海上ホールディングス | MS&ADインシュアランスグループホールディングス |
|---|---|---|
| 売上高 | 8兆8,723億円(2026年3月期) | 7兆6,530億円(2026年3月期) |
| 当期利益 | 9,804億円(2026年3月期) | 7,873億円(2026年3月期) |
| 時価総額 | 16兆8,084億円(2026-10-30時点) | 7兆8,478億円(2026-10-30時点) |
| PER | 31.1倍(2026-10-30時点) | 15.33倍(2026-10-30時点) |
| ROE | 18.7%(2026年3月期) | —(未確認) |
| 自己資本比率 | 17%(2026年3月期) | 16.7%(2026年3月期) |
| 有利子負債 | 2,270億円(2026年3月期) | 9,984億円(2026年3月期) |
| 現金及び現金同等物 | 2兆851億円(2026年3月期) | 2兆2,229億円(2026年3月期) |
| 年間配当 | 218円(2026年3月期) | 160円(2026年3月期) |
| 配当利回り | 2.82%(2026-10-30時点) | 3.23%(2026-10-30時点) |
| 平均年収 | 1,487.1万円(2026年3月期(提出会社単体の平均年間給与)) | 1,237.6万円(2026年3月期(提出会社単体の平均年間給与)) |
| 平均年齢 | 42.4歳(2026年3月期(提出会社単体)) | 47.2歳(2026年3月期(提出会社単体)) |
| 平均勤続年数 | 14.8年(2026年3月期(提出会社単体)) | 21.7年(2026年3月期(提出会社単体)) |
| 従業員数(連結) | 67,526人(連結従業員数(2026年3月期)) | 46,856人(連結従業員数(2026年3月期)) |
| 決算月 | 3月 | 3月 |
| 創業 | 2002年4月2日 | 2008年4月1日 |
| 本社 | 東京都千代田区大手町二丁目6番4号 | 東京都中央区新川二丁目27番2号 |
| 証券コード | 8766 | 8725 |
対象期は原則として両社とも2026年3月期の数値です。
売上高
当期利益
時価総額
PER
ROE
自己資本比率
有利子負債
現金及び現金同等物
年間配当
配当利回り
平均年収
平均年齢
平均勤続年数
従業員数(連結)
決算月
創業
本社
証券コード
グラフで比べる
2社の違いを読み解く
東京海上ホールディングスは国内損害保険、国内生命保険、海外保険、ソリューション・その他の4事業です。2026年3月期のセグメント利益は国内損害保険事業が7,445億円で最大、海外保険事業が5,591億円、国内生命保険事業が236億円、ソリューション・その他事業が214億円でした。経常収益では海外保険事業が4兆5,999億円と連結経常収益8兆8,723億円の約51.8%を占め(セグメント数値は内部取引を含みます)、収益の置き場は海外が国内損害保険の3兆7,903億円を上回ります。
MS&ADインシュアランスグループホールディングスは、三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険の2つの中核損保を持つ構成です。2026年3月期の売上高(正味収入保険料・生命保険料等)では三井住友海上が1兆6,256億円、あいおいニッセイ同和が1兆3,425億円、海外事業が1兆9,228億円で、セグメント利益(当期純利益ベース)は三井住友海上4,599億円、海外事業2,619億円、あいおいニッセイ同和1,087億円でした。三井ダイレクト損害保険はセグメント利益がマイナス18億円と赤字の区分も含まれます。
成り立ちでは、東京海上ホールディングスは2002年に東京海上火災保険と日動火災海上保険の株式移転により設立され、2004年に両社が合併して東京海上日動火災保険が発足しました。グループの創業は1879年とされています。MS&ADは2008年に三井住友海上火災保険の単独株式移転により設立され、2010年にあいおい損害保険とニッセイ同和損害保険が加わって現在の商号になりました。東京海上が1つの中核損保を軸に海外を広げたのに対し、MS&ADは統合で2つの損保ブランドを束ねた形です。
利益の動きでは対照がはっきりします。2026年3月期は東京海上が経常収益5.1%増の一方で経常利益7.6%減・当期純利益7.1%減、MS&ADは経常収益14.9%増、経常利益20.6%増・当期純利益13.8%増と、規模で上回る東京海上が減益、MS&ADが2桁の増益でした。セグメント利益の内訳でも、東京海上は国内損害保険と海外保険の2本柱、MS&ADは三井住友海上を中心に海外事業とあいおいニッセイ同和が続く形で、柱の本数と利益の出方が異なります。
違いのポイント
- 東京海上の海外保険事業は2026年3月期に経常収益4兆5,999億円と連結経常収益の約51.8%を占め、セグメント利益は5,591億円
- MS&ADの中核損保は三井住友海上のセグメント利益4,599億円に対し、あいおいニッセイ同和は1,087億円(2026年3月期、当期純利益ベース)
- 2026年3月期は東京海上が経常利益7.6%減の一方、MS&ADは経常利益20.6%増と増減が対照的だった
- MS&ADの三井ダイレクト損害保険はセグメント利益マイナス18億円と赤字の区分がある(2026年3月期)
- 東京海上は子会社436社・関連会社25社、MS&ADは子会社236社・関連会社36社でグループを構成する(2026年3月期)
財務と株主還元
規模と利益では、2026年3月期の連結経常収益は東京海上8兆8,723億円、MS&AD7兆6,530億円で東京海上が約1.2兆円上回ります。経常利益は東京海上1兆3,486億円、MS&AD1兆1,202億円、親会社株主に帰属する当期純利益は東京海上9,804億円、MS&AD7,873億円でした。連結総資産は東京海上31兆9,619億円、MS&AD28兆6,408億円、自己資本比率は東京海上17.0%、MS&AD16.7%と近接します。日本基準のROEは東京海上が18.7%と開示されています。両社とも保険会社のため営業利益の表示はありません。
株主還元と市場評価では、2026年3月期の年間配当は東京海上218円(配当性向42.3%)、MS&AD160円です。2026年10月30日時点のスナップショットでは、時価総額は東京海上16兆8,084億円がMS&AD7兆8,478億円の約2.1倍、PERは東京海上31.1倍、MS&AD15.33倍と開きがあり、配当利回りはMS&AD3.23%が東京海上2.82%を上回ります。2027年3月期は両社ともIFRSベースの予想となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は東京海上8,300億円、MS&AD4,250億円を見込んでいます。東京海上は2027年3月期の年間配当245円への増配も予想しています。
人と組織
人と組織では、連結従業員数は東京海上67,526人、MS&AD46,856人(いずれも2026年3月期)で東京海上が約2.1万人多くなっています。提出会社単体の平均年間給与は東京海上1,487.1万円、MS&AD1,237.6万円で東京海上が249.5万円高く、平均年齢は東京海上42.4歳に対しMS&AD47.2歳、平均勤続年数は東京海上14.8年に対しMS&AD21.7年と、MS&ADの方が年齢・勤続とも高くなっています。単体従業員数は東京海上1,339人、MS&AD478人で、MS&ADの単体従業員は全員が子会社からの出向者と注記されています。中核損保同士では、東京海上日動火災保険が従業員数16,064人・平均年間給与9,059,913円、三井住友海上火災保険が12,731人・8,148,828円、あいおいニッセイ同和損害保険が12,515人・7,580,511円と開示されています。
沿革から見る現在地
東京海上ホールディングスは2002年4月2日に東京海上火災保険株式会社と日動火災海上保険株式会社の株式移転により設立され、東京証券取引所・大阪証券取引所市場第一部に上場しました。2004年に東京海上火災保険と日動火災海上保険が合併して東京海上日動火災保険が発足、2008年に株式会社ミレアホールディングスから現在の商号に変更しています。グループの創業は1879年とされ、持株会社の設立からも20年以上が経過しています。2025年にはイーデザイン損害保険が東京海上ダイレクト損害保険に名称を変更しました。
MS&ADは2008年4月1日に三井住友海上火災保険株式会社の単独株式移転により三井住友海上グループホールディングス株式会社として設立されました。2010年に株式交換によりあいおい損害保険株式会社とニッセイ同和損害保険株式会社が主要な連結子会社となり、MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社に商号変更しています。2016年には英国のAmlin plcが主要な連結子会社となりましたが、2020年に全株式を売却しています。東京海上が中核損保の合併を早期に終えたのに対し、MS&ADは2つの損保ブランドを併存させてきた経緯があり、両中核損保の合併による新会社の発足は2027年4月の予定です。
読むときの注意点
- セグメント数値の基準が両社で異なります。東京海上のセグメントは経常収益とセグメント利益、MS&ADの事業別数値は売上高が正味収入保険料・生命保険料等、セグメント利益が当期純利益ベースであり、事業別の金額をそのまま横並びに比べることはできません。また両社とも2027年3月期からIFRSを適用する前提で予想を開示しており、2026年3月期の日本基準の実績と予想の利益を単純に増減で結ぶ際は会計基準の変更に注意が必要です。
- 時価総額・PER・配当利回りは2026年10月30日時点のスナップショットです。MS&ADのレコードにはROEと配当性向の収録値がないため、この原稿でも示していません。平均年間給与は提出会社単体の数値で、東京海上は単体従業員の大部分が子会社からの出向者、MS&ADは全員が出向者と注記されており、連結従業員全体の水準ではありません。
まとめ
まとめると、経常収益・経常利益・当期純利益・時価総額はいずれも東京海上が大きく、2026年3月期の増益率と配当利回りではMS&ADが上回る2社です。東京海上は海外保険の経常収益が連結の過半を占める構成、MS&ADは2つの中核損保と海外事業を持つ構成で、2027年4月には中核損保同士の合併による新会社発足を予定しています。規模と海外の厚みの東京海上、統合の過程にあるMS&ADという違いが要点です。
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数字の出典と確認日は各社の企業ページに記載しています(この比較の確認日: 2026/11/05)。