日本郵船と商船三井の違い
一言でいうと: 物流まで広げる日本郵船と、海運に不動産も持つ商船三井
2026年3月期の売上高は日本郵船2兆4,237億円が商船三井1兆8,251億円を上回りますが、当期純利益は商船三井2,133億円と日本郵船2,118億円でほぼ並びます。利益の出どころは、日本郵船が自動車事業、商船三井が製品輸送事業と、最大の部門が異なる点に注目してください。
なぜこの2社を比べるのか: 国内海運大手の2社です。コンテナ船事業はともに合弁会社OCEAN NETWORK EXPRESS(ONE)を通じて行いながら、グループ全体の事業構成と利益の出どころは異なります。その違いを2026年3月期の数字で比べます。
日本郵船の事業の仕組み
日本郵船の事業は定期船・物流・自動車・ドライバルク・エネルギー・その他の6部門で構成されます。2026年3月期の売上高は、物流事業8,047億円、ドライバルク事業5,510億円、自動車事業5,268億円、エネルギー事業2,369億円、定期船事業1,809億円、その他事業1,813億円でした。物流が売上の最大部門で、連結従業員数39,830人のうち物流事業が30,395人を占めることも特徴です。
利益の中心は自動車事業です。2026年3月期の経常利益は自動車事業979億円、エネルギー事業544億円、定期船事業497億円(ONEの持分法利益を含む)と続き、売上最大の物流事業は102億円、ドライバルク事業は95億円にとどまります。自動車専用船等による輸送と自動車物流が、グループの利益を支える形です。
なお航空運送事業は、2025年8月に日本貨物航空の全株式をANAホールディングスへ譲渡し、連結から外れました。2026年3月期の同事業の売上高411億円・経常利益21億円は、連結除外までの実績です。現在の6部門構成は、この再編を経た姿です。
商船三井の事業の仕組み
商船三井の事業はドライバルク、エネルギー、製品輸送の3事業を中核に、ウェルビーイングライフ事業、関連事業、その他が加わります。2026年3月期の売上高は製品輸送事業6,415億円、エネルギー事業5,257億円、ドライバルク事業4,557億円で、3事業で連結売上高1兆8,251億円の大半を占めます。
製品輸送事業の中身はコンテナ船・自動車船・フェリー等で、うちコンテナ船事業は売上高536億円・経常損益266億円です。エネルギー事業は油送船・LNG船・ケミカルタンカー等による輸送で、経常損益555億円を計上しました。多様な船種を持つことが、事業区分の広がりに表れています。
海運以外の顔として、ウェルビーイングライフ事業には不動産事業(ダイビル)が含まれます。同事業全体は2026年3月期に売上高1,222億円・経常損益27億円の損失でしたが、うち不動産事業は売上高489億円・経常損益67億円でした。ダイビルは2004年に子会社化し、2022年に完全子会社化しています。
| 項目 | 日本郵船 | 商船三井 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2兆4,237億円(2026年3月期) | 1兆8,251億円(2026年3月期) |
| 営業利益 | 1,386億円(2026年3月期) | 1,270億円(2026年3月期) |
| 営業利益率 | 5.7%(2026年3月期) | 7%(2026年3月期) |
| 当期利益 | 2,118億円(2026年3月期) | 2,133億円(2026年3月期) |
| 時価総額 | 3兆594億円(2026-10-30時点) | 2兆7,853億円(2026-10-30時点) |
| PER | 14.95倍(2026-10-30時点) | 12.37倍(2026-10-30時点) |
| ROE | 7.1%(2026年3月期) | 7.7%(2026年3月期) |
| 自己資本比率 | 59.1%(2026年3月期) | 48.2%(2026年3月期) |
| 有利子負債 | 1兆2,015億円(2026年3月期) | 2兆4,955億円(2026年3月期) |
| 現金及び現金同等物 | 2,108億円(2026年3月期) | 2,015億円(2026年3月期) |
| 売上高(予想) | 2兆6,050億円(2027年3月期 通期予想(決算短信)) | 2兆400億円(2027年3月期 通期予想(決算短信)) |
| 年間配当 | 230円(2026年3月期) | 200円(2026年3月期) |
| 配当利回り | 3.17%(2026-10-30時点) | 2.67%(2026-10-30時点) |
| 平均年収 | 1,554.5万円(2026年3月期(提出会社単体の平均年間給与)) | 1,659.9万円(2026年3月期(提出会社単体の平均年間給与)) |
| 平均年齢 | 37.8歳(2026年3月期(提出会社単体)) | 38.4歳(2026年3月期(提出会社単体)) |
| 平均勤続年数 | 13.9年(2026年3月期(提出会社単体)) | 12.9年(2026年3月期(提出会社単体)) |
| 従業員数(連結) | 39,830人(連結従業員数(2026年3月期)) | 11,567人(連結従業員数(2026年3月期)) |
| 決算月 | 3月 | 3月 |
| 創業 | 1885年9月 | 1884年 |
| 本社 | 東京都千代田区丸の内二丁目3番2号 | 東京都港区虎ノ門二丁目1番1号 |
| 証券コード | 9101 | 9104 |
対象期は原則として両社とも2026年3月期の数値です。
売上高
営業利益
営業利益率
当期利益
時価総額
PER
ROE
自己資本比率
有利子負債
現金及び現金同等物
売上高(予想)
年間配当
配当利回り
平均年収
平均年齢
平均勤続年数
従業員数(連結)
決算月
創業
本社
証券コード
グラフで比べる
2社の違いを読み解く
日本郵船の事業は定期船・物流・自動車・ドライバルク・エネルギー・その他の6部門です。2026年3月期の売上高では物流事業が8,047億円と最大で、連結売上高2兆4,237億円の約3分の1を占めます。ただし経常利益では物流事業は102億円にとどまり、自動車事業が売上高5,268億円・経常利益979億円と最大の利益源です。売上を稼ぐ部門と利益を稼ぐ部門が分かれている構成です。
商船三井はドライバルク・エネルギー・製品輸送の3事業を中核とし、ウェルビーイングライフ事業なども展開します。2026年3月期は製品輸送事業が売上高6,415億円・経常損益959億円と売上・利益の両方で最大で、エネルギー事業が5,257億円・555億円、ドライバルク事業が4,557億円・108億円と続きます。日本郵船と比べると、最大部門がそのまま最大の利益源になる構成です。
成り立ちはともに19世紀にさかのぼります。日本郵船は1885年に郵便汽船三菱会社と共同運輸会社の合併で設立され、商船三井は1884年創立の大阪商船を起源とします。コンテナ船では両社とも川崎汽船と2017年にONEを設立し、2018年4月にサービスを開始しました。共通の合弁を持ちながら、残りの事業の広げ方が現在の構成の差になっています。
数字を掘り下げると、規模と利益の関係も対照的です。日本郵船は売上高2兆4,237億円と大きい一方、営業利益率は5.7%(2026年3月期)で、商船三井は売上高1兆8,251億円と小さいながら営業利益率7.0%と上回ります。当期純利益は日本郵船2,118億円、商船三井2,133億円とほぼ同水準です。海運市況の影響を受ける中で、物流や自動車輸送、不動産など、海運以外の部門をどこまで持つかが両社の違いです。
違いのポイント
- 日本郵船は物流事業の売上高8,047億円が最大だが、経常利益は自動車事業979億円が最大(2026年3月期)
- 商船三井は製品輸送事業が売上高6,415億円・経常損益959億円で売上・利益とも最大(2026年3月期)
- 当期純利益は日本郵船2,118億円、商船三井2,133億円とほぼ並ぶ(2026年3月期)
- 連結従業員数は日本郵船39,830人、商船三井11,567人と3倍以上の開きがある
- コンテナ船事業は両社とも川崎汽船との合弁会社ONEを通じて行う
財務と株主還元
2026年3月期の収益性は、売上規模と逆の順序になります。営業利益は日本郵船1,386億円(営業利益率5.7%)、商船三井1,270億円(同7.0%)で、経常利益は日本郵船2,111億円、商船三井1,758億円、当期純利益は日本郵船2,118億円、商船三井2,133億円です。経常利益の前期比は日本郵船が57.0%減、商船三井が58.1%減と、両社とも大きく減少した期でした。ROEは日本郵船7.1%、商船三井7.7%です。
財務と還元では、自己資本比率は日本郵船59.1%が商船三井48.2%を上回り、総資産は日本郵船5兆2,017億円に対し商船三井5兆9,622億円と、資産規模では商船三井が大きくなります。年間配当は日本郵船230円(配当性向45.6%)、商船三井200円(同32.3%)でした。2026年10月30日時点のスナップショットでは、時価総額は日本郵船3兆594億円、商船三井2兆7,853億円、配当利回りはそれぞれ3.17%、2.67%です。
人と組織
連結従業員数は日本郵船39,830人、商船三井11,567人(2026年3月期)と大きな差がありますが、これは日本郵船の物流事業に30,395人が所属するためです。提出会社単体の平均年間給与は商船三井が約1,660万円(平均年齢38.4歳、平均勤続12.9年、単体1,433人)と、日本郵船の約1,555万円(平均年齢37.8歳、平均勤続13.9年、単体1,370人)を上回ります。グループ全体の人数と単体の処遇は、別の軸として読む必要があります。
沿革から見る現在地
日本郵船は1885年9月に郵便汽船三菱会社と共同運輸会社の合併により設立され、同年10月に創業しました。1949年に東京・大阪・名古屋の各証券取引所へ上場し、1964年に三菱海運と合併しています。1978年に設立した日本貨物航空は、2025年に全株式をANAホールディングスへ譲渡しました。
商船三井は1884年に大阪商船が創立され、1942年に三井船舶が分離独立、1964年に両社が合併して大阪商船三井船舶が発足しました。1999年にナビックスラインとの合併で現商号の商船三井となりました。2025年にはGearbulkの連結子会社化やLBC Tank Terminalsの完全子会社化など、海外での事業取得も進めています。
読むときの注意点
- 両社のセグメント区分は異なるため、部門同士をそのまま対応させることはできません。日本郵船の定期船事業の経常利益497億円にはONEの持分法利益が含まれ、商船三井の製品輸送事業の中のコンテナ船事業は売上高536億円・経常損益266億円と別に示されています。コンテナ船の寄与の見え方は開示によって異なります。
- 商船三井には掲載済みの事案として、2020年7月にモーリシャス沖で傭船していたWAKASHIO号が座礁し、燃料油が流出した事故があります。自社所有でない傭船船の事故でも対応が問われた事例として、沿革とあわせて読む必要があります。
まとめ
この比較の要点は、同じ総合海運でも「広げ方」が違うことです。日本郵船は物流事業が売上と人員の中心で、利益は自動車事業が担います。商船三井は製品輸送を中心に多様な船種を持ち、不動産のダイビルも抱えます。2026年3月期は両社とも当期純利益が2,100億円台で並びましたが、その中身の出どころは異なります。規模ではなく、どの部門が売上と利益を生むかで比べることが大切です。
数字の出典と確認日は各社の企業ページに記載しています(この比較の確認日: 2026/11/05)。