三井不動産と三菱地所の違い
一言でいうと: 売上高で上回る三井不動産と、丸の内を核に利益率で上回る三菱地所
2026年3月期は売上高2兆7,097億円・営業利益3,978億円の三井不動産が規模で上回りますが、営業利益率は三菱地所が18.9%と三井不動産の14.7%を上回ります。時価総額は2026年10月30日時点で三菱地所4兆6,252億円が三井不動産4兆2,579億円を上回り、平均年収は三井不動産が1,855.5万円と高くなっています。
なぜこの2社を比べるのか: 国内不動産大手の上位2社です。どちらもオフィス賃貸を核としながら、三井不動産は分譲とマネジメントまで幅広く、三菱地所は丸の内地区への集中が際立つなど、同じデベロッパーでも稼ぎ方の置き場が異なります。規模と利益率、事業構成の違いを比べます。
三井不動産の事業の仕組み
三井不動産の事業は賃貸・分譲・マネジメント・施設営業・その他の5セグメントです。2026年3月期の売上高では、オフィスビルや商業施設の賃貸事業が9,366億円(9,366億円)で連結売上高2兆7,097億円の約34.6%を占め、東京ミッドタウンや三井ショッピングパーク ららぽーと等を展開します。分譲事業は7,293億円(7,293億円)、仲介の三井のリハウスや駐車場の三井のリパーク、REITの資産運用等を含むマネジメント事業は5,115億円(5,115億円)でした。
利益では順位が入れ替わります。セグメント利益は営業利益に持分法投資損益等を加えた事業利益で開示され、分譲事業が1,932億円(1,932億円)で最大、賃貸事業が1,770億円(1,770億円)、マネジメント事業が809億円(809億円)と続きます。三井ガーデンホテルズや東京ドームシティを担う施設営業事業は売上高2,441億円・事業利益463億円、三井ホームの新築請負等を含むその他事業は売上高2,883億円・事業利益102億円です。米国・英国・アジアでも現地法人が賃貸・分譲を展開し、ニューヨークでは55ハドソンヤードと50ハドソンヤードが竣工しています。
三菱地所の事業の仕組み
三菱地所の事業はコマーシャル不動産、丸の内、住宅、海外、投資マネジメント、設計監理・不動産サービス、その他の区分で開示されます。2026年3月期はオフィスビルを中心に商業施設・物流施設・ホテル・空港等の開発・賃貸・運営を担うコマーシャル不動産事業が営業収益6,170億円(6,170億円)・営業利益1,357億円(1,357億円)で最大です。大手町・丸の内・有楽町地区に特化した丸の内事業は営業収益4,090億円(4,090億円)・営業利益975億円(975億円)で、地区を独立セグメントとする開示は三井不動産にはない形です。
住宅事業は三菱地所レジデンスによるマンション・戸建の建設・販売等で営業収益4,539億円(4,539億円)・営業利益573億円(573億円)、米州・欧州・アジアで展開する海外事業は営業収益1,989億円(1,989億円)・営業利益571億円(571億円)でした。投資マネジメント事業は営業収益370億円・営業利益14億円、三菱地所設計等による設計監理・不動産サービス事業は営業収益884億円・営業利益126億円、その他事業は営業利益がマイナス23億円と赤字の区分も含まれます。
| 項目 | 三井不動産 | 三菱地所 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2兆7,097億円(2026年3月期) | 1兆7,461億円(2026年3月期) |
| 営業利益 | 3,978億円(2026年3月期) | 3,297億円(2026年3月期) |
| 営業利益率 | 14.7%(2026年3月期) | 18.9%(2026年3月期) |
| 当期利益 | 2,787億円(2026年3月期) | 2,225億円(2026年3月期) |
| 時価総額 | 4兆2,579億円(2026-10-30時点) | 4兆6,252億円(2026-10-30時点) |
| PER | 15.64倍(2026-10-30時点) | 21倍(2026-10-30時点) |
| ROE | 8.7%(2026年3月期) | 8.5%(2026年3月期) |
| 自己資本比率 | 32.4%(2026年3月期) | 31.4%(2026年3月期) |
| 有利子負債 | 4兆6,325億円(2026年3月期) | 3兆5,819億円(2026年3月期) |
| 現金及び現金同等物 | 823億円(2026年3月期) | 2,801億円(2026年3月期) |
| 売上高(予想) | 2兆8,000億円(2027年3月期 通期予想(決算短信)) | 2兆円(2027年3月期 通期予想(決算短信)) |
| 年間配当 | 35円(2026年3月期) | 46円(2026年3月期) |
| 配当利回り | 2.34%(2026-10-30時点) | 1.28%(2026-10-30時点) |
| 平均年収 | 1,855.5万円(2026年3月期(提出会社単体の平均年間給与)) | 1,759.3万円(2026年3月期(提出会社単体の平均年間給与)) |
| 平均年齢 | 42.1歳(2026年3月期(提出会社単体)) | 42.5歳(2026年3月期(提出会社単体)) |
| 平均勤続年数 | 16年(2026年3月期(提出会社単体)) | 16.3年(2026年3月期(提出会社単体)) |
| 従業員数(連結) | 27,704人(連結従業員数(2026年3月期)) | 11,659人(連結従業員数(2026年3月期)) |
| 決算月 | 3月 | 3月 |
| 創業 | 1941年7月15日 | 1937年5月7日 |
| 本社 | 東京都中央区日本橋室町二丁目1番1号 | 東京都千代田区大手町一丁目1番1号 |
| 証券コード | 8801 | 8802 |
対象期は原則として両社とも2026年3月期の数値です。
売上高
営業利益
営業利益率
当期利益
時価総額
PER
ROE
自己資本比率
有利子負債
現金及び現金同等物
売上高(予想)
年間配当
配当利回り
平均年収
平均年齢
平均勤続年数
従業員数(連結)
決算月
創業
本社
証券コード
グラフで比べる
2社の違いを読み解く
三井不動産は賃貸・分譲・マネジメント・施設営業・その他の5セグメントで構成されます。2026年3月期は賃貸事業が売上高9,366億円で最大ですが、事業利益では分譲事業が1,932億円と賃貸事業の1,770億円を上回り最大です。分譲事業の売上高に対する事業利益の割合は約26.5%と5事業で最も高く、マンション等の分譲が利益の柱の一つになっています。マネジメント事業は売上高5,115億円・事業利益809億円、施設営業事業は売上高2,441億円・事業利益463億円でした。
三菱地所はコマーシャル不動産事業と丸の内事業を分けた開示が特徴です。2026年3月期はコマーシャル不動産事業が営業収益6,170億円・営業利益1,357億円で最大、丸の内事業が営業収益4,090億円・営業利益975億円と続きます。住宅事業は営業収益4,539億円に対し営業利益573億円、海外事業は営業収益1,989億円に対し営業利益571億円と、海外事業は収益規模が住宅事業の半分以下ながら利益ではほぼ並び、営業収益に対する割合は約28.7%と高くなっています。
成り立ちでは、三井不動産が1941年に旧三井合名会社所有の不動産の経営を目的として設立され、1968年の霞が関ビルディング、2007年の東京ミッドタウン、2021年の東京ドームの連結子会社化を経てきたのに対し、三菱地所は1937年に三菱合資会社の貸事務所経営部門を継承して設立され、2002年の丸の内ビルディング竣工以降、丸の内再開発を本格化させてきました。三井不動産の関係会社が454社にのぼるのに対し、三菱地所は大手町・丸の内・有楽町地区に特化した丸の内事業を独立セグメントとして持ちます。
利益の置き場を比べると、三井不動産は売上高最大の賃貸と利益最大の分譲が分かれる分散型、三菱地所はコマーシャル不動産と丸の内というオフィス関連の2事業で営業利益1,357億円と975億円を稼ぐ集中型です。ただし三菱地所も海外事業の利益率が高く、住宅事業と利益が並ぶ点では分散の要素を持ちます。売上高では三井不動産が約1.55倍大きい一方、営業利益率では三菱地所が上回るという、規模と効率の対照が両社の要点です。
違いのポイント
- 三井不動産は2026年3月期に売上高最大が賃貸事業9,366億円、事業利益最大が分譲事業1,932億円と分かれる
- 三菱地所の丸の内事業は営業収益4,090億円・営業利益975億円で、地区特化の独立セグメントを持つ
- 三菱地所の海外事業は営業収益1,989億円に対し営業利益571億円と、住宅事業の営業利益573億円にほぼ並ぶ
- 営業利益率は三菱地所18.9%が三井不動産14.7%を上回る一方、売上高は三井不動産2兆7,097億円が三菱地所の営業収益1兆7,461億円を上回る(2026年3月期)
- 連結従業員数は三井不動産27,704人に対し三菱地所11,659人と、三井不動産が約1.6万人多い(2026年3月期)
財務と株主還元
規模では、2026年3月期の三井不動産の連結売上高2兆7,097億円に対し、三菱地所の連結営業収益は1兆7,461億円で、三井不動産が約9,636億円上回ります。営業利益は三井不動産3,978億円、三菱地所3,297億円、親会社株主に帰属する当期純利益は三井不動産2,787億円、三菱地所2,225億円でした。一方で営業利益率は三菱地所が18.9%と三井不動産の14.7%を4.2ポイント上回ります。総資産は三井不動産10兆1,035億円、三菱地所8兆5,662億円、自己資本比率は三井不動産32.4%、三菱地所31.4%、ROEは三井不動産8.7%、三菱地所8.5%と近接しています。
株主還元と市場評価では、2026年3月期の年間配当は三井不動産35円(配当性向34.6%)、三菱地所46円(同25.3%)です。2026年10月30日時点のスナップショットでは、時価総額は三菱地所4兆6,252億円が三井不動産4兆2,579億円を上回り、PERは三菱地所21倍、三井不動産15.64倍、配当利回りは三井不動産2.34%、三菱地所1.28%でした。2027年3月期の会社予想は、三井不動産が売上高2兆8,000億円・営業利益4,100億円、三菱地所が営業収益2兆円・営業利益3,700億円としています。
人と組織
人と組織では、連結従業員数は三井不動産27,704人、三菱地所11,659人(いずれも2026年3月期)と、三井不動産が約2.4倍多くなっています。提出会社単体の平均年間給与は三井不動産1,855.5万円、三菱地所1,759.3万円で三井不動産が96.2万円高く、平均年齢は三井不動産42.1歳、三菱地所42.5歳、平均勤続年数は三井不動産16.0年、三菱地所16.3年とほぼ並びます。単体従業員数は三井不動産1,981人、三菱地所1,729人(三菱地所は正社員基準)で、連結人数との差は三井不動産の方が大きく、マネジメントや施設営業など運営を担うグループ会社の厚みがうかがえます。
沿革から見る現在地
三井不動産は1941年7月15日に三井総元方の三井改組計画により、旧三井合名会社所有の不動産の経営を主たる目的として設立され、1949年に東京証券取引所に上場しました。1968年に霞が関ビルディングが竣工、1981年にららぽーと船橋SC(現在のららぽーとTOKYO-BAY)の営業を開始、2007年に東京ミッドタウン、2018年に東京ミッドタウン日比谷、2022年に東京ミッドタウン八重洲が竣工しています。2021年には株式会社東京ドームを株式公開買付けにより連結子会社化し、施設営業の幅を広げました。
三菱地所は1937年5月7日に三菱合資会社の地所部が担当していた貸事務所経営部門を継承して設立され、1953年に東京・大阪両証券取引所に上場しました。1993年に横浜ランドマークタワーが竣工、2002年に丸の内ビルディングが竣工して丸の内再開発が本格化、2011年に三菱地所レジデンスが発足して住宅分譲事業を統合、2021年にTOKYO TORCH 常盤橋タワーが竣工しています。三井不動産が日本橋を拠点に都心の複合開発と商業施設・分譲へ広げてきたのに対し、三菱地所は丸の内という一地区の再開発を核に据えてきた歩みです。
読むときの注意点
- 指標の名称が両社で異なります。三井不動産の売上高に対し三菱地所は営業収益であり、セグメント利益も三井不動産は事業利益、三菱地所は営業利益と基準が異なります。単純なセグメント利益同士の比較には注意が必要です。また三菱地所の単体従業員数1,729人は正社員基準の数値で、三井不動産の単体数値と集計の前提が異なる場合があります。
- 時価総額・PER・配当利回りは2026年10月30日時点のスナップショットであり、その後の株価変動は反映されていません。目標では、三井不動産の長期経営方針『& INNOVATION 2030』の2026年度の利益目標・ROE目標は2025年度実績で1年前倒しで達成された一方、三菱地所の長期経営計画2030の目標(事業利益3,500億〜4,000億円、ROE10.0%、EPS200円)に対し2025年度実績は事業利益3,298億円、ROE8.5%、EPS181.80円と、進捗の段階が異なります。
まとめ
まとめると、2026年3月期の売上高・営業利益・当期純利益はいずれも三井不動産が大きく、営業利益率と時価総額では三菱地所が上回る2社です。三井不動産は分譲が事業利益で最大となるなど事業の幅で稼ぎ、三菱地所は丸の内事業という地区特化の柱と利益率の高い海外事業を持ちます。平均年収は三井不動産が高く、連結従業員数も約2.4倍と組織の形も異なります。規模の三井不動産、効率と丸の内の三菱地所という対照が要点です。
数字の出典と確認日は各社の企業ページに記載しています(この比較の確認日: 2026/11/05)。