アステラス製薬と武田薬品工業の違い
一言でいうと: 重点製品で伸ばすアステラスと、規模最大の武田薬品
2026年3月期の売上収益は武田薬品工業4兆5,057億円がアステラス製薬2兆1,392億円の2倍を超えますが、報告ベースの営業利益はアステラス製薬3,826億円に対し、武田薬品工業は訴訟引当金4,025億円の影響で62億円にとどまりました。会社定義のCore営業利益では武田薬品工業1兆1,725億円、アステラス製薬5,557億円と、見る指標で姿が変わる対比です。
なぜこの2社を比べるのか: 国内新薬大手の2社です。ともに医薬品事業の単一セグメントで、売上収益の約9割を海外で稼ぎます。規模は武田薬品工業が大きく、2026年3月期の報告利益ではアステラス製薬が上回るという、指標の読み方が問われる比較です。
アステラス製薬の事業の仕組み
アステラス製薬の事業は、医療用医薬品の研究開発・製造・販売を行う医薬品事業の単一セグメントで、2026年3月期の売上収益2兆1,392億円の全てがこの事業です。前立腺がん治療薬イクスタンジを中核とし、重点戦略製品としてイクスタンジ、パドセブ、アイザベイ、ビロイ、ベオーザ、ゾスパタの6製品を位置づけています。経営計画2026では2030年度に重点戦略製品の売上を2025年度比2倍とする目標を掲げています。
地域構成は米国が中心です。2026年3月期の地域別売上収益は米国9,402億円、日本2,890億円、Established Markets5,636億円、中国1,015億円、International Markets2,307億円で、海外売上比率は約86.5%でした。連結子会社は80社で、米国子会社アステラス ファーマ US, Inc.は売上高1兆2,584億円と、連結売上収益の10%を超える特定子会社です。
武田薬品工業の事業の仕組み
武田薬品工業の事業は医薬品事業の単一セグメントで、内訳は事業エリア別に示されます。2026年3月期の売上収益は、消化器系疾患領域1兆4,075億円(連結の31.2%)、血漿分画製剤1兆575億円(同23.5%)、希少疾患7,627億円(同16.9%)、オンコロジー5,801億円(同12.9%)、ニューロサイエンス4,143億円(同9.2%)でした。消化器系疾患領域には潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬エンティビオ(売上収益9,580億円)が含まれます。
地域別売上収益は米国2兆1,648億円、日本4,331億円、欧州・カナダ1兆1,462億円、中南米2,541億円、中国1,951億円で、海外売上比率は約9割に達します。ニューロサイエンスにはADHD治療薬ビバンセ(売上収益2,032億円、↓ 前期比42.0%減)が含まれます。連結子会社は154社と、アステラス製薬の80社を大きく上回るグループ体制です。
| 項目 | アステラス製薬 | 武田薬品工業 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2兆1,392億円(2026年3月期) | 4兆5,057億円(2026年3月期) |
| 営業利益 | 3,826億円(2026年3月期) | 62億円(2026年3月期) |
| 営業利益率 | 17.9%(2026年3月期) | 0.1%(2026年3月期) |
| 当期利益 | 2,915億円(2026年3月期) | -1,524億円(2026年3月期) |
| 時価総額 | 4兆6,526億円(2026-10-30時点) | 10兆6,564億円(2026-10-30時点) |
| PER | 15.4倍(2026-10-30時点) | 50.8倍(2026-10-30時点) |
| ROE | 17.4%(2026年3月期) | -2.1%(2026年3月期) |
| 自己資本比率 | 51.3%(2026年3月期) | 47.9%(2026年3月期) |
| 有利子負債 | 5,660億円(2026年3月期) | 4兆8,818億円(2026年3月期) |
| 現金及び現金同等物 | 2,816億円(2026年3月期) | 5,951億円(2026年3月期) |
| 売上高(予想) | 2兆2,200億円(2027年3月期 通期予想(決算短信)) | 4兆6,400億円(2027年3月期 通期予想(決算短信)) |
| 年間配当 | 78円(2026年3月期) | 200円(2026年3月期) |
| 配当利回り | 3.11%(2026-10-30時点) | 3.07%(2026-10-30時点) |
| 平均年収 | 1,132万円(2026年3月期(提出会社単体の平均年間給与)) | 1,145万円(2026年3月期(提出会社単体の平均年間給与)) |
| 平均年齢 | 42.5歳(2026年3月期(提出会社単体)) | 44歳(2026年3月期(提出会社単体)) |
| 平均勤続年数 | 15.4年(2026年3月期(提出会社単体)) | 14.8年(2026年3月期(提出会社単体)) |
| 従業員数(連結) | 14,099人(連結従業員数(2026年3月期)) | 47,029人(連結従業員数(2026年3月期)) |
| 決算月 | 3月 | 3月 |
| 創業 | 2005年4月 | 1925年1月 |
| 本社 | 東京都中央区日本橋本町二丁目5番1号 | 大阪府大阪市中央区道修町四丁目1番1号 |
| 証券コード | 4503 | 4502 |
対象期は原則として両社とも2026年3月期の数値です。
売上高
営業利益
営業利益率
当期利益
時価総額
PER
ROE
自己資本比率
有利子負債
現金及び現金同等物
売上高(予想)
年間配当
配当利回り
平均年収
平均年齢
平均勤続年数
従業員数(連結)
決算月
創業
本社
証券コード
グラフで比べる
2社の違いを読み解く
アステラス製薬の事業は医療用医薬品の研究開発・製造・販売を行う単一セグメントです。2026年3月期の売上収益は2兆1,392億円↑ 前期比11.9%増で、地域別では米国9,402億円が最大、日本2,890億円、Established Markets5,636億円、中国1,015億円、International Markets2,307億円と、海外売上比率は約86.5%でした。重点戦略製品としてイクスタンジ、パドセブ、アイザベイ、ビロイ、ベオーザ、ゾスパタの6製品を位置づけています。
武田薬品工業も医薬品事業の単一セグメントですが、決算短信では事業エリア別の売上収益が示されます。2026年3月期は消化器系疾患領域が1兆4,075億円と連結売上収益4兆5,057億円の31.2%を占めて最大で、血漿分画製剤1兆575億円、希少疾患7,627億円、オンコロジー5,801億円、ニューロサイエンス4,143億円と続きます。地域別では米国2兆1,648億円が最大で、海外比率は約9割です。
成り立ちの古さは対照的です。武田薬品工業は1781年に大阪・道修町で薬種商を開業したことにさかのぼり、アステラス製薬は2005年4月に山之内製薬と藤沢薬品工業の合併で発足しました。母体の山之内薬品商会の創立は1923年です。200年を超える歴史を持つ武田薬品工業と、合併で生まれて約20年のアステラス製薬という違いがあります。
2026年3月期の利益を掘り下げると、報告値とCore値の使い分けが要点になります。武田薬品工業は米国でのAMITIZA独占禁止法訴訟の引当金4,025億円を計上し、営業利益62億円、当期損失1,524億円となりましたが、Core営業利益は1兆1,725億円↑ 前期比0.8%増でした。アステラス製薬は営業利益3,826億円(同832.4%増)、Core営業利益5,557億円(同41.6%増)です。1期の報告利益だけで収益力を判断しないことが、この比較では特に重要です。
違いのポイント
- 売上収益は武田4兆5,057億円がアステラス2兆1,392億円の2倍超(2026年3月期)
- 武田は訴訟引当金4,025億円で営業利益62億円・当期損失1,524億円、Core営業利益は1兆1,725億円(2026年3月期)
- アステラスは営業利益3,826億円、Core営業利益5,557億円と大幅増益(2026年3月期)
- 海外売上比率はアステラス約86.5%、武田約9割と両社とも海外が中心
- 武田の最大エリアは消化器系疾患領域1兆4,075億円で、エンティビオの売上収益は9,580億円
財務と株主還元
2026年3月期の報告ベースでは、アステラス製薬が営業利益3,826億円(営業利益率17.9%)、当期利益2,915億円、ROE17.4%と大幅増益でした。武田薬品工業は営業利益62億円(同0.1%)、当期損失1,524億円、ROEマイナス2.1%と、訴訟引当金4,025億円の計上が大きく響きました。一方でCore営業利益は武田薬品工業1兆1,725億円、アステラス製薬5,557億円と、規模の順序どおり武田薬品工業が上回ります。
財務と還元では、自己資本比率はアステラス製薬51.3%、武田薬品工業47.9%です。年間配当はアステラス製薬78円(配当性向47.9%)、武田薬品工業200円でした。2027年3月期の予想は、アステラス製薬が売上収益2兆2,200億円・営業利益3,950億円、武田薬品工業が売上収益4兆6,400億円・営業利益4,200億円です。2026年10月30日時点のスナップショットでは、時価総額はアステラス製薬4兆6,526億円、武田薬品工業10兆6,564億円、配当利回りはそれぞれ3.11%、3.07%です。
人と組織
連結従業員数は武田薬品工業47,029人、アステラス製薬14,099人(2026年3月期)と3倍以上の差があります。提出会社単体の平均年間給与は武田薬品工業約1,145万円(平均年齢44.0歳、平均勤続14.8年)、アステラス製薬約1,132万円(平均年齢42.5歳、平均勤続15.4年)とほぼ同じ水準です。売上収益の規模の差ほどには単体の処遇に差がなく、組織の広がりと1人当たりの処遇は別の軸であることが分かります。
沿革から見る現在地
アステラス製薬は、1923年に山之内薬品商会が創立され、1949年に山之内製薬が上場した流れを母体の一つとし、2005年4月に藤沢薬品工業と合併して発足しました。その後は2007年にアジェンシス、2010年にOSIファーマシューティカルズ、2020年にオーデンテス セラピューティクス、2023年にIVERIC bioと、米国企業の買収を重ねてがん・遺伝子治療・眼科などの領域を広げてきました。
武田薬品工業は1781年に大阪・道修町で薬種商を開業して創業し、1925年に株式会社武田長兵衛商店を設立、1943年に現在の商号となりました。1949年に上場し、2011年にスイスのナイコメッドを買収、2018年にニューヨーク証券取引所へ米国預託証券を上場、2019年にShire plc.を買収して希少疾患・血漿分画製剤を強化しました。現在の事業エリア構成は、この買収の歩みとつながっています。
読むときの注意点
- 武田薬品工業の2026年3月期の報告利益は、AMITIZA独占禁止法訴訟の引当金4,025億円という一時的要因で大きく下がっています。営業利益62億円や当期損失1,524億円だけを見て本業の収益力と判断せず、Core営業利益1兆1,725億円とあわせて読む必要があります。逆にアステラス製薬の営業利益の前年比832.4%増も、前期の水準が低かったことによる伸び率であり、率だけで評価しないことが大切です。
- 両社の開示の切り分け方も異なります。アステラス製薬は地域別の売上収益が中心で事業エリア別の金額は示されず、武田薬品工業は事業エリア別の売上収益が示されます。製品群ごとの細かな対応比較は、開示の範囲内に限られます。
まとめ
この比較の要点は、規模と1期の報告利益の順序が逆になることです。武田薬品工業は売上収益4兆5,057億円と国内最大の規模を持ち、Core営業利益でも上回りますが、2026年3月期は訴訟引当金で最終赤字となりました。アステラス製薬は重点戦略製品を軸に大幅増益を計上しました。両社とも海外比率が約9割のグローバル製薬であり、比べる際は報告値とCore値を分けて読むことが欠かせません。
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数字の出典と確認日は各社の企業ページに記載しています(この比較の確認日: 2026/11/05)。