東レと旭化成の違い
一言でいうと: 素材に絞る東レと、住宅が最大の利益源の旭化成
2026年3月期の売上は旭化成3兆745億円が東レ2兆5,851億円を上回り、営業利益率も旭化成7.5%対東レ3.8%、ROEも8.0%対4.5%と旭化成が上回ります。東レは繊維が売上の約4割を占める素材構成、旭化成は売上最大がマテリアルでも利益最大は住宅という構成です。平均年間給与は東レ838万円、旭化成848万円と近接します。
なぜこの2社を比べるのか: 素材大手同士の比較です。東レは繊維から炭素繊維まで素材の中で広げる構成、旭化成は化学に住宅とヘルスケアを加えた3領域構成で、同じ「素材メーカー」でも利益の出どころが大きく異なります。
東レの事業の仕組み
東レの5セグメントはすべて素材関連です。2026年3月期の売上収益は繊維1兆511億円、機能化成品8,944億円、炭素繊維複合材料3,001億円、環境・エンジニアリング2,669億円、ライフサイエンス524億円で、事業利益は繊維680億円、機能化成品563億円、環境・エンジニアリング288億円、炭素繊維複合材料176億円の順でした。ライフサイエンスは1億円の事業損失です。
繊維は糸・綿・織編物、不織布、人工皮革、アパレル製品等、機能化成品は樹脂・フィルム・ケミカル・電子情報材料等を扱います。炭素繊維複合材料は航空機向けプリプレグなどで世界シェアNo.1と公式サイトに記されています。地域別売上収益は日本1兆450億円、中国4,931億円、その他アジア4,975億円、欧米ほか5,494億円で、海外が約60%と、素材を世界に売る構成です。連結子会社は200社です。
主な連結子会社には東レインターナショナル、蝶理、東レエンジニアリング、東レ・ファインケミカル、米国のToray Plastics (America), Inc.などがあり、関係会社数は308社です(2026年3月末)。2027年3月期の予想は売上収益2兆8,300億円、事業利益1,600億円、親会社の所有者に帰属する当期利益900億円と、2026年3月期からの増益を見込む形が示されています。
旭化成の事業の仕組み
旭化成はマテリアル、住宅、ヘルスケア、その他の区分です。2026年3月期の売上高はマテリアル1兆3,062億円、住宅1兆774億円、ヘルスケア6,641億円、その他267億円でした。マテリアルには石油化学、繊維、電子材料・電子部品、化学品が含まれ、住宅は戸建住宅「ヘーベルハウス」や集合住宅、建材、不動産関連、ヘルスケアは医薬品、医療機器、米国のZOLL Medicalによるクリティカルケアを含みます。
利益の順位は売上と異なります。2026年3月期の営業利益は住宅998億円が最大で、ヘルスケア835億円、マテリアル683億円、その他39億円でした。売上高が3番目のヘルスケアが利益では2番目で、売上最大のマテリアルは3番目にとどまります。地域別売上高は日本1兆3,800億円、米国6,535億円、中国2,540億円、その他7,871億円で、海外比率は約55%です。連結子会社は285社です。
主な連結子会社には旭化成ホームズ、旭化成建材、旭化成エレクトロニクス、旭化成ファーマのほか、海外のVeloxis Pharmaceuticals、ZOLL Medicalが並び、住宅とヘルスケアの事業会社がグループの中核にいることが顔ぶれからも分かります。中期経営計画2027(2025〜2027年度)では、2027年度に営業利益2,700億円、のれん償却前営業利益3,060億円、ROIC6.0%、ROE9.0%を目標に掲げています。
| 項目 | 東レ | 旭化成 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2兆5,851億円(2026年3月期) | 3兆745億円(2026年3月期) |
| 営業利益 | 972億円(2026年3月期) | 2,312億円(2026年3月期) |
| 営業利益率 | 3.8%(2026年3月期) | 7.5%(2026年3月期) |
| 当期利益 | 795億円(2026年3月期) | 1,588億円(2026年3月期) |
| 時価総額 | 1兆7,012億円(2026-10-30時点) | 2兆1,546億円(2026-10-30時点) |
| PER | 19.1倍(2026-10-30時点) | 13.3倍(2026-10-30時点) |
| ROE | 4.5%(2026年3月期) | 8%(2026年3月期) |
| 自己資本比率 | 51.8%(2026年3月期) | 50.5%(2026年3月期) |
| 有利子負債 | 8,640億円(2026年3月期) | 9,675億円(2026年3月期) |
| 現金及び現金同等物 | 2,653億円(2026年3月期) | 3,721億円(2026年3月期) |
| 売上高(予想) | 2兆8,300億円(2027年3月期 通期予想(決算短信)) | 3兆2,540億円(2027年3月期 通期予想(決算短信)) |
| 年間配当 | 20円(2026年3月期) | 42円(2026年3月期) |
| 配当利回り | 2.21%(2026-10-30時点) | 2.74%(2026-10-30時点) |
| 平均年収 | 838万円(2026年3月期(提出会社単体の平均年間給与)) | 848万円(2026年3月期(提出会社単体の平均年間給与)) |
| 平均年齢 | 40.8歳(2026年3月期(提出会社単体)) | 41.9歳(2026年3月期(提出会社単体)) |
| 平均勤続年数 | 17.4年(2026年3月期(提出会社単体)) | 17.1年(2026年3月期(提出会社単体)) |
| 従業員数(連結) | 46,294人(連結従業員数(2026年3月期)) | 47,895人(連結従業員数(2026年3月期)) |
| 決算月 | 3月 | 3月 |
| 創業 | 1926年1月 | 1931年5月21日 |
| 本社 | 東京都中央区日本橋室町2-1-1 日本橋三井タワー | 東京都千代田区有楽町一丁目1番2号 |
| 証券コード | 3402 | 3407 |
対象期は原則として両社とも2026年3月期の数値です。
売上高
営業利益
営業利益率
当期利益
時価総額
PER
ROE
自己資本比率
有利子負債
現金及び現金同等物
売上高(予想)
年間配当
配当利回り
平均年収
平均年齢
平均勤続年数
従業員数(連結)
決算月
創業
本社
証券コード
グラフで比べる
2社の違いを読み解く
東レの事業は繊維、機能化成品、炭素繊維複合材料、環境・エンジニアリング、ライフサイエンスの5セグメントで、いずれも素材とその応用です。2026年3月期の売上収益は繊維1兆511億円が最大で連結の約4割、機能化成品8,944億円が続きます。事業利益も繊維680億円、機能化成品563億円の順で、炭素繊維複合材料は売上収益3,001億円・事業利益176億円でした。海外売上収益は1兆5,401億円と全体の約60%を占めます。
旭化成はマテリアル、住宅、ヘルスケアの3領域です。2026年3月期の売上高はマテリアル1兆3,062億円が最大ですが、営業利益は住宅998億円が最大で、ヘルスケア835億円、マテリアル683億円と、売上と利益の順位が入れ替わります。戸建住宅「ヘーベルハウス」を持つ住宅が、総合化学メーカーの最大の利益源という構成です。東レに住宅事業はなく、素材の外へ出ない東レと、素材の外に大きな利益源を持つ旭化成という対照が、この比較の出発点です。
成り立ちにも違いがあります。東レは1926年に東洋レーヨンとして創立され、1970年に現社名となりました。2013年に米国の炭素繊維メーカーZoltek社を買収し、2015年にはBoeing社と777X向け炭素繊維プリプレグの包括的長期供給契約を締結、2026年に創立100周年を迎えます。旭化成は1922年創業、1931年設立で、1957年に合成樹脂、1974年に人工腎臓で医療へ進出し、2012年には米国のZOLL Medical社を買収してクリティカルケアへ広げました。
収益性の差は数字でも明確です。2026年3月期の営業利益は東レ972億円(営業利益率3.8%)に対し旭化成2,312億円(同7.5%)で、売上高の差以上に開きがあります。東レは事業利益1,419億円と営業利益972億円の間に差があり、韓国子会社のバッテリーセパレータフィルム事業の減損損失が営業利益の減益要因とされています。自己資本比率は東レ51.8%、旭化成50.5%とほぼ並び、財務の厚みは近い水準です。ROEは東レ4.5%、旭化成8.0%でした。
違いのポイント
- 東レは繊維が売上収益1兆511億円・事業利益680億円で売上・利益とも最大(2026年3月期)
- 旭化成は売上高最大がマテリアル1兆3,062億円だが、営業利益は住宅998億円が最大(2026年3月期)
- 営業利益率は旭化成7.5%が東レ3.8%を上回り、ROEも8.0%対4.5%(2026年3月期)
- 海外売上比率は東レ約60%、旭化成約55%で、旭化成の最大の海外市場は米国の6,535億円
- 東レは2026年に創立100周年、旭化成は中期経営計画2027で2027年度の営業利益2,700億円を目標に掲げる
財務と株主還元
2026年3月期の全社数字では、売上高は旭化成3兆745億円が東レの売上収益2兆5,851億円を上回り、営業利益は旭化成2,312億円、東レ972億円と2倍以上の差があります。営業利益率は7.5%対3.8%、ROEは8.0%対4.5%です。東レは事業利益では1,419億円あり、韓国子会社のバッテリーセパレータフィルム事業で減損損失を計上したことが、営業利益の減益要因とされています。
財務体質は近接します。自己資本比率は東レ51.8%、旭化成50.5%、有利子負債は東レ8,640億円、旭化成9,675億円、現金及び現金同等物は東レ2,653億円、旭化成3,721億円です。年間配当は東レ20円(配当性向37.8%)、旭化成42円(同35.9%)で、2026年10月30日時点のスナップショットでは時価総額は東レ1兆7,012億円、旭化成2兆1,546億円、PERは19.1倍対13.3倍でした。
総資産は東レ3兆4,770億円、旭化成4兆1,379億円、自己資本は東レ1兆8,001億円、旭化成2兆885億円です。2027年3月期の予想は、東レが売上収益2兆8,300億円・事業利益1,600億円、旭化成が売上高3兆2,540億円・営業利益2,480億円で、旭化成は年間配当44円への増配も予想しています。2026年10月30日時点の配当利回りは東レ2.21%、旭化成2.74%でした。
人と組織
連結従業員数は東レ46,294人、旭化成47,895人(2026年3月期)と1,601人差で近接します。提出会社単体の平均年間給与は東レ838万円、旭化成848万円と10万円差、平均年齢は東レ40.8歳、旭化成41.9歳、平均勤続年数は東レ17.4年、旭化成17.1年です。規模も人の数字も近い両社で、差が出ているのは収益性の方だと言えます。
提出会社単体の従業員数は東レ7,027人、旭化成8,233人です。連結従業員数がほぼ並ぶのに対し単体では旭化成の方が多く、東レは子会社側に人員の比重がより大きい構成です。平均年間給与の原数値は東レ8,384,000円、旭化成8,483,519円で、差は約10万円にとどまります。
沿革から見る現在地
東レは1926年に東洋レーヨン株式会社として創立され、1970年に東レ株式会社へ社名変更しました。2013年に米国のラージトウ炭素繊維メーカーZoltek社を買収、2015年にBoeing社と新型機777X向け炭素繊維プリプレグの包括的長期供給契約を締結し、2026年に創立100周年を迎えます。レーヨンから始まり、繊維とその周辺素材を広げてきた歩みです。
旭化成は1922年に旭絹織株式会社を設立して創業し、1931年に延岡アンモニア絹絲株式会社を設立、1949年に上場しました。1957年に合成樹脂へ進出、1974年に人工腎臓の生産を開始して医療へ入り、2003年に分社・持株会社制へ移行、2012年に米国のZOLL Medical社を買収しました。化学から住宅・医療へ領域そのものを広げてきた点が、東レとの歩みの違いです。
読むときの注意点
- 会計基準と利益の定義が異なります。東レはIFRSで、セグメント利益は事業利益ベースです。旭化成は日本基準で、セグメント利益は営業利益です。東レの2026年3月期は事業利益1,419億円と営業利益972億円が併記されており、どの利益で比べるかで差の見え方が変わります。
- 東レの海外売上収益比率約60%は地域別売上収益の合計から、旭化成の約55%は顧客所在地ベースの地域別売上高から算出されたもので、集計の基礎が完全には揃っていません。旭化成の住宅には建材や不動産関連も含まれ、東レの繊維とも直接は対応しません。
まとめ
まとめると、東レは繊維を最大の柱に素材の中で広げる構成で、海外売上収益が約60%を占めます。旭化成は売上規模、営業利益率7.5%、ROE8.0%で東レを上回り、最大の利益源は化学ではなく住宅998億円です。従業員数や平均年収が近い両社だけに、素材への集中と領域の広がりという事業構成の違いが、収益性の差として表れています。
比べる際は、東レのセグメント利益が事業利益ベースであること、旭化成の最大の利益源が住宅であることを押さえたうえで、素材そのものの収益力と、領域を広げたことによる収益の安定という別の物差しで見ることが欠かせません。
数字の出典と確認日は各社の企業ページに記載しています(この比較の確認日: 2026/11/05)。