日清食品ホールディングスと東洋水産の違い
一言でいうと: チキンラーメン・カップヌードルの日清食品HDと、マルちゃんの東洋水産
2026年3月期は売上収益で日清食品ホールディングスが7,881億円と東洋水産の5,366億円を上回る一方、営業利益は東洋水産が858億円で日清の623億円を上回り、営業利益率も16.0%対7.9%と差が開きました。規模と収益力の向きが逆転している点が読みどころです。単体の平均年収は日清が約842.5万円、東洋水産が約699万円です。
なぜこの2社を比べるのか: 即席めんを主力とする食品メーカー同士です。国内即席めんを軸に菓子や低温食品へ広げる日清食品ホールディングスと、海外即席麺が利益の柱の東洋水産とで、同じ即席めんでも稼ぎ方の違いを比べます。
日清食品ホールディングスの事業の仕組み
日清食品ホールディングスの事業は、国内即席めん、低温・飲料、菓子と、米州・中国・アジア・EMEAの海外事業に分かれます。2026年3月期の国内即席めん事業は日清食品株式会社と明星食品株式会社による事業で、売上収益2,902億円(日清食品2,419億円と明星食品483億円の合計)、既存事業コア営業利益360億円と、連結売上収益7,881億円の中で最大の区分です。なお既存事業コア営業利益は、IFRSの営業利益から新規事業損益と非経常損益を控除した会社定義の指標で、連結の同利益は706億円、IFRS営業利益は623億円です。
国内の他の事業では、低温・飲料事業が売上収益1,042億円、既存事業コア営業利益78億円、菓子事業が売上収益959億円、同利益57億円です。海外は売上収益2,884億円で連結の36.6%を占め、米州1,637億円(同利益105億円)が最大、中国749億円(同利益90億円)、EMEA271億円、アジア226億円と続きます。国内即席めんを中心に、国内の周辺食品と海外即席めんを組み合わせた構成です。
東洋水産の事業の仕組み
東洋水産の事業は海外即席麺、国内即席麺、低温食品、水産食品、冷蔵、加工食品の各事業です。2026年3月期は海外即席麺事業が外部顧客への売上高2,482億円、セグメント利益636億円と売上・利益とも最大で、連結売上高5,366億円の約46%を占めます。米国を中心に即席麺類の製造・販売を行う事業が、会社全体の利益の大部分を生む構成です。
国内では即席麺事業が売上高1,044億円、セグメント利益105億円、低温食品事業が売上高615億円、セグメント利益81億円、水産食品事業が売上高327億円、セグメント利益15億円、冷蔵事業が売上高263億円、セグメント利益28億円です。加工食品事業は売上高234億円、セグメント損失4億円でした。即席麺以外にも低温食品や水産食品、冷蔵倉庫事業を持ちますが、利益の中心は海外即席麺に置かれています。
| 項目 | 日清食品ホールディングス | 東洋水産 |
|---|---|---|
| 売上高 | 7,881億円(2026年3月期) | 5,366億円(2026年3月期) |
| 営業利益 | 623億円(2026年3月期) | 858億円(2026年3月期) |
| 営業利益率 | 7.9%(2026年3月期) | 16%(2026年3月期) |
| 当期利益 | 454億円(2026年3月期) | 702億円(2026年3月期) |
| 時価総額 | 9,046億円(2026-10-30時点) | 1兆2,241億円(2026-10-30時点) |
| PER | 18.6倍(2026-10-30時点) | 16.4倍(2026-10-30時点) |
| ROE | 9.1%(2026年3月期) | 13.9%(2026年3月期) |
| 自己資本比率 | 52.7%(2026年3月期) | 82.6%(2026年3月期) |
| 有利子負債 | —(未確認) | 5億円(2026年3月期) |
| 現金及び現金同等物 | 983億円(2026年3月期) | 357億円(2026年3月期) |
| 売上高(予想) | 8,600億円(2027年3月期 通期予想(決算短信)) | 5,600億円(2027年3月期 通期予想(決算短信)) |
| 年間配当 | 70円(2026年3月期) | 220円(2026年3月期) |
| 配当利回り | 2.3%(2026-10-30時点) | 1.99%(2026-10-30時点) |
| 平均年収 | 842.5万円(2026年3月期(提出会社単体の平均年間給与)) | 699万円(2026年3月期(提出会社単体の平均年間給与)) |
| 平均年齢 | 39.5歳(2026年3月期(提出会社単体)) | 41.7歳(2026年3月期(提出会社単体)) |
| 平均勤続年数 | 8.7年(2026年3月期(提出会社単体)) | 16.8年(2026年3月期(提出会社単体)) |
| 従業員数(連結) | 17,988人(連結従業員数(2026年3月期)) | 4,717人(連結従業員数(2026年3月期)) |
| 決算月 | 3月 | 3月 |
| 創業 | 1948年9月4日 | 1953年3月 |
| 本社 | 大阪市淀川区西中島四丁目1番1号 | 東京都港区港南二丁目13番40号 |
| 証券コード | 2897 | 2875 |
対象期は原則として両社とも2026年3月期の数値です。
売上高
営業利益
営業利益率
当期利益
時価総額
PER
ROE
自己資本比率
有利子負債
現金及び現金同等物
売上高(予想)
年間配当
配当利回り
平均年収
平均年齢
平均勤続年数
従業員数(連結)
決算月
創業
本社
証券コード
グラフで比べる
2社の違いを読み解く
事業構成の違いは海外の置き方に表れます。日清食品ホールディングスは2026年3月期、国内即席めん事業(日清食品と明星食品の合計)が売上収益2,902億円、既存事業コア営業利益360億円と最大の区分で、低温・飲料事業1,042億円、菓子事業959億円が続きます。海外は米州1,637億円、中国749億円など合計2,884億円で連結の36.6%を占めています。
東洋水産は海外即席麺事業が売上高2,482億円と連結売上高5,366億円の約46%を占め、セグメント利益636億円は連結営業利益858億円の大部分を占めます。国内即席麺事業は売上高1,044億円、セグメント利益105億円で、低温食品事業615億円、水産食品事業327億円、冷蔵事業263億円などが続きます。海外が最大の事業であり利益の柱である点が、日清との違いです。
成り立ちでは、日清食品ホールディングスは1948年に株式会社中交総社として設立され、1958年に瞬間油熱乾燥法による即席袋めん「チキンラーメン」を開発して日清食品へ商号変更し、1971年にカップめん「カップヌードル」の販売を開始しました。2008年に持株会社制へ移行しています。東洋水産は1953年に設立され、1972年に米国子会社マルチャン・インクを設立して海外即席麺事業を本格化させた経緯が、現在の海外中心の利益構成につながっています。
数字を掘り下げると、利益率の差が際立ちます。東洋水産の海外即席麺事業は売上高2,482億円に対するセグメント利益636億円で、割合は約25.6%に達します。日清の国内即席めん事業は売上収益2,902億円に対する既存事業コア営業利益360億円で約12.4%、米州事業は売上収益1,637億円に対する同利益105億円で約6.4%です。連結でも東洋水産の営業利益率16.0%に対し日清は7.9%と、売上規模では日清が大きく、収益力では東洋水産が高いという対比になっています。
違いのポイント
- 日清食品HDは2026年3月期の売上収益7,881億円に対し営業利益623億円で、営業利益率は7.9%
- 東洋水産は売上高5,366億円に対し営業利益858億円で、営業利益率は16.0%と日清を上回る
- 東洋水産の海外即席麺事業は売上高2,482億円、セグメント利益636億円と最大の事業で利益の柱
- 日清の国内即席めん事業は売上収益2,902億円、既存事業コア営業利益360億円が最大区分
- 2026年10月30日時点の時価総額は東洋水産12,241億円、日清食品HD9,046億円と東洋水産が大きい
財務と株主還元
2026年3月期の連結業績は、規模と収益力の向きが逆転しました。日清食品ホールディングスは売上収益7,881億円(7,881億円)、営業利益623億円、親会社の所有者に帰属する当期利益454億円で営業利益率7.9%です。東洋水産は売上高5,366億円(5,367億円)と日清より小さい一方、営業利益858億円、親会社株主に帰属する当期純利益702億円と利益では上回り、営業利益率は16.0%、ROEも13.9%と日清の9.1%を上回ります。
財務の安全性では東洋水産が目立ちます。自己資本比率は東洋水産82.6%に対し日清は親会社所有者帰属持分比率52.7%で、東洋水産の有利子負債は5億円にとどまります。株主還元は、日清が年間配当70円、配当性向44.5%、東洋水産が年間配当220円、配当性向30.8%です。2026年10月30日時点のスナップショットでは、時価総額は東洋水産12,241億円、日清9,046億円、配当利回りは日清2.3%、東洋水産1.99%でした。2027年3月期予想は日清が売上収益8,600億円、東洋水産が売上高5,600億円、営業利益820億円としていますが、いずれも会社予想の数値です。
今後の目標の置き方にも差があります。日清食品ホールディングスの中長期成長戦略2030では、既存事業コア営業利益のオーガニック成長率として1桁台半ばを掲げ、ROEは2030年度までに10%以上を目標としています。このROE目標は2026年5月に従来の15%から下方修正されたものです。あわせて純有利子負債/EBITDA倍率2倍以下と、累進的配当による安定的な株主還元が示されています。東洋水産についてはレコードに中期計画の掲載がなく、目標の形でも両社の違いが表れています。
人と組織
人の数字では対照的な姿が見えます。連結従業員数は日清食品ホールディングスが17,988人、東洋水産が4,717人(いずれも2026年3月期)で、日清が約1.3万人多くなっています。提出会社単体の平均年間給与は日清が約842.5万円、東洋水産が約699万円で日清が約143万円高い一方、平均年齢は日清39.5歳、東洋水産41.7歳、平均勤続年数は日清8.7年、東洋水産16.8年と、東洋水産の方が勤続が長くなっています。なお日清の単体は持株会社であり、単体従業員数は980人と有価証券報告書に基づくFAQに記載されています。
沿革から見る現在地
日清食品ホールディングスは1948年に株式会社中交総社として設立され、1958年に「チキンラーメン」を開発して日清食品株式会社へ商号変更、1971年に「カップヌードル」の販売を開始しました。2008年に持株会社制へ移行して現商号となり、2017年には日清食品有限公司が香港証券取引所メインボード市場に上場しています。即席めんとカップめんを生んだ創始者としての歩みが、現在の事業の土台です。
東洋水産は1953年に設立され、1972年に米国子会社マルチャン・インクを設立して海外即席麺事業を本格化させました。レコードに残る沿革はこの2件にとどまりますが、1972年の米国進出が、2026年3月期に海外即席麺事業が売上高2,482億円、セグメント利益636億円と最大の事業になった現在の構成につながっています。
読むときの注意点
- 利益指標の定義が両社で異なります。日清食品ホールディングスはIFRSを採用し、事業別の利益として会社定義の既存事業コア営業利益を用いているのに対し、東洋水産は日本基準でセグメント利益を示しています。区分ごとの利益をそのまま同列に比べることはできません。また日清の単体の平均年間給与・平均年齢・平均勤続年数は持株会社の数値であり、事業会社を含む連結の姿とは異なる点にも注意が必要です。
- 東洋水産は海外即席麺事業のセグメント利益636億円が連結営業利益858億円の大部分を占めており、この事業の動向が全体に影響しやすい構成です。日清食品ホールディングスの海外売上収益も連結の36.6%を占めるため、両社とも海外事業の動向からは切り離せません。時価総額や配当利回りは2026年10月30日時点のスナップショットであり、現在の値ではありません。
まとめ
まとめると、即席めんを主力としながら、2026年3月期の日清食品ホールディングスは売上収益7,881億円の規模と国内を中心とした幅広い食品事業、東洋水産は売上高5,367億円ながら営業利益率16.0%と海外即席麺の収益力が特徴です。規模は日清、収益力と自己資本比率82.6%の財務の厚みは東洋水産という対比が要点です。
数字の出典と確認日は各社の企業ページに記載しています(この比較の確認日: 2026/11/05)。