日本製鉄とJFEホールディングスの違い
一言でいうと: USスチールを連結化した日本製鉄と、鉄鋼・エンジニアリング・商社のJFEホールディングス
2026年3月期の売上収益は日本製鉄が10兆632億円とJFEホールディングスの4兆5,393億円の2倍超ですが、当期利益は日本製鉄172億円に対しJFE702億円と逆転しました。USスチールの連結化で規模を広げた日本製鉄と、商社事業が最大のセグメント利益を上げたJFEの違いが読みどころです。
なぜこの2社を比べるのか: 国内鉄鋼大手同士です。高炉を中核としながら周辺事業の持ち方が異なる2社について、2026年3月期の規模、利益の出た区分、財務の姿を比べます。
日本製鉄の事業の仕組み
日本製鉄の事業は製鉄、エンジニアリング、ケミカル&マテリアル、システムソリューションの4区分です。2026年3月期の製鉄は鉄鋼製品の製造・販売を行う中核区分で、売上収益92,217億円、事業利益4,399億円と、連結売上収益10兆632億円(10兆632億円)の大半を占めます。当期はUSスチールが連結子会社となったことが大きな変化で、公式会社概要では世界16カ国以上に製造拠点を展開しているとされています。
製鉄以外の3区分では、日鉄エンジニアリングを中心とするエンジニアリングが売上収益3,944億円、事業利益231億円、化学品・機能材料などを扱うケミカル&マテリアルが売上収益2,579億円、事業利益219億円、日鉄ソリューションズを中心とするシステムソリューションが売上収益3,828億円、事業利益433億円でした。売上規模では製鉄が突出しますが、システムソリューションは売上収益3,828億円に対して事業利益433億円と、製鉄以外の区分の中では利益額が大きくなっています。
JFEホールディングスの事業の仕組み
JFEホールディングスはJFEスチールを中核に、鉄鋼、エンジニアリング、商社の3事業を持つ持株会社です。2026年3月期の鉄鋼事業は売上高3兆884億円(3兆884億円、セグメント間取引を含む)、セグメント利益380億円で、連結の粗鋼生産量は2,255万トンでした。売上では最大の事業ですが、セグメント利益では次に述べる商社事業を下回っています。
エンジニアリング事業はJFEエンジニアリングによるプラント・インフラ事業で、売上高5,997億円、セグメント利益239億円と、売上収益と受注高はともに過去最高となりました。商社事業はJFE商事を中心とする鉄鋼商社事業で、売上高1兆3,330億円、セグメント利益402億円と3事業で最大の利益です。鉄鋼の製造だけでなく、エンジニアリングと商社が独立した事業として利益を上げる体制が特徴です。連結子会社は328社と有価証券報告書の関係会社の状況から集計されています。
| 項目 | 日本製鉄 | JFEホールディングス |
|---|---|---|
| 売上高 | 10兆632億円(2026年3月期) | 4兆5,393億円(2026年3月期) |
| 営業利益 | 2,429億円(2026年3月期) | 1,122億円(2026年3月期) |
| 営業利益率 | 2.4%(2026年3月期) | 2.5%(2026年3月期) |
| 当期利益 | 172億円(2026年3月期) | 702億円(2026年3月期) |
| 時価総額 | 3兆5,278億円(2026-10-30時点) | 1兆1,344億円(2026-10-30時点) |
| PER | 11.8倍(2026-10-30時点) | 16.08倍(2026-10-30時点) |
| ROE | 0.3%(2026年3月期) | 2.7%(2026年3月期) |
| 自己資本比率 | 37.7%(2026年3月期) | 44.4%(2026年3月期) |
| 有利子負債 | 5兆1,743億円(2026年3月期) | 1兆9,593億円(2026年3月期) |
| 現金及び現金同等物 | 4,613億円(2026年3月期) | 1,678億円(2026年3月期) |
| 売上高(予想) | 11兆円(2027年3月期 通期予想(決算短信)) | 4兆8,000億円(2027年3月期 通期予想(決算短信)) |
| 年間配当 | 24円(2026年3月期) | 80円(2026年3月期) |
| 配当利回り | 3.66%(2026-10-30時点) | 4.5%(2026-10-30時点) |
| 平均年収 | 909万円(2026年3月期(提出会社単体の平均年間給与)) | 1,228万円(2026年3月期(提出会社単体の平均年間給与)) |
| 平均年齢 | 41.3歳(2026年3月期(提出会社単体)) | 48歳(2026年3月期(提出会社単体)) |
| 平均勤続年数 | 19.5年(2026年3月期(提出会社単体)) | 23.5年(2026年3月期(提出会社単体)) |
| 従業員数(連結) | 138,453人(連結従業員数(2026年3月期)) | 61,628人(連結従業員数(2026年3月期)) |
| 決算月 | 3月 | 3月 |
| 創業 | 1950年4月1日 | 2002年9月 |
| 本社 | 東京都千代田区丸の内2-6-1 | 東京都千代田区内幸町二丁目2番3号 |
| 証券コード | 5401 | 5411 |
対象期は原則として両社とも2026年3月期の数値です。
売上高
営業利益
営業利益率
当期利益
時価総額
PER
ROE
自己資本比率
有利子負債
現金及び現金同等物
売上高(予想)
年間配当
配当利回り
平均年収
平均年齢
平均勤続年数
従業員数(連結)
決算月
創業
本社
証券コード
グラフで比べる
2社の違いを読み解く
日本製鉄の事業は製鉄を中核に、エンジニアリング、ケミカル&マテリアル、システムソリューションの4区分です。2026年3月期の製鉄は売上収益92,217億円、事業利益4,399億円と大半を占め、エンジニアリングは売上収益3,944億円、事業利益231億円、ケミカル&マテリアルは売上収益2,579億円、事業利益219億円、システムソリューションは売上収益3,828億円、事業利益433億円でした。製鉄の周辺に、鉄以外の事業を組み合わせた構成です。
JFEホールディングスは鉄鋼、エンジニアリング、商社の3事業体制です。2026年3月期は鉄鋼事業が売上高3兆884億円、セグメント利益380億円、エンジニアリング事業が売上高5,997億円、セグメント利益239億円、商社事業が売上高1兆3,330億円、セグメント利益402億円でした。売上では鉄鋼が最大ですが、セグメント利益では商社事業が3事業で最大となり、本業の鉄鋼以外が利益を支えた点が日本製鉄との違いです。
成り立ちと当期の変化にも差があります。日本製鉄は1950年に八幡製鐵と富士製鐵が発足した流れを持ち、2012年に新日本製鐵と住友金属工業の統合で新日鐵住金が誕生し、2019年に日本製鉄へ社名変更しました。2025年には米国USスチールの買収を完了して連結子会社化し、2026年3月期は同社を含む87社など109社が連結範囲に新規追加されています。JFEホールディングスは2002年に日本鋼管と川崎製鉄が株式移転により設立した持株会社で、2003年に事業会社へ再編した統合の形が異なります。
利益の数字を掘り下げると、両社とも本業以外や一時的な要因の影響が大きい期でした。日本製鉄は会社が重視する事業利益が5,141億円あった一方、営業利益は2,429億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は172億円まで低下し、決算短信はUSスチール合併に伴う事業再編損等の影響を示しています。JFEも事業利益は1,354億円と前期と同水準を確保したものの、京浜地区の土地活用に伴う整備推進費など個別開示項目の損失で営業利益は1,122億円、当期利益は702億円でした。
違いのポイント
- 日本製鉄は2026年3月期の売上収益10兆632億円とJFEの4兆5,393億円の2倍超の規模
- 当期利益は日本製鉄172億円に対しJFEホールディングス702億円と、規模と逆の結果になった
- JFEは商社事業のセグメント利益402億円が鉄鋼事業380億円を上回り3事業で最大
- 日本製鉄は2025年にUSスチールの買収を完了し、2026年3月期に109社が連結範囲へ新規追加された
- JFEの連結粗鋼生産量は2,255万トン(2026年3月期)
財務と株主還元
2026年3月期の連結業績は、売上規模と最終利益の向きが逆転しました。日本製鉄は売上収益10兆632億円、事業利益5,141億円、営業利益2,429億円、営業利益率2.4%でしたが、親会社の所有者に帰属する当期利益は172億円、ROEは0.3%まで低下しました。JFEホールディングスは売上収益4兆5,393億円、事業利益1,354億円、営業利益1,122億円、営業利益率2.5%で、当期利益は702億円、ROEは2.7%です。営業利益率に大きな差はない一方、当期利益ではJFEが日本製鉄を上回っています。
財務では、日本製鉄の親会社所有者帰属持分比率が37.7%、有利子負債が5兆1,743億円、現金同等物が4,613億円です。JFEは同持分比率44.4%、有利子負債1兆9,593億円、現金同等物1,678億円でした。株主還元は日本製鉄が年間配当24円(株式分割を考慮した表示)で、当期利益の急減により配当性向は731.0%と短信に記載されています。JFEは年間配当80円、配当性向72.5%で前期100円から減配しました。2026年10月30日時点のスナップショットでは時価総額は日本製鉄35,278億円、JFE11,344億円、配当利回りは日本製鉄3.66%、JFE4.5%です。2027年3月期予想は日本製鉄が売上収益11兆円、当期利益2,200億円、JFEが売上収益4兆8,000億円、事業利益2,150億円、当期利益1,500億円としていますが、会社予想の数値です。
今後の方針では、日本製鉄が2027年3月期から2031年3月期までの5年間を対象とする2030中長期経営計画を策定し、「総合力世界No.1の鉄鋼メーカー」を目指すことと、配当性向は年間30%程度を目安とする利益配分方針を決算短信で示しています。JFEホールディングスについてはレコードに中期計画の掲載がありません。2026年3月期の配当性向が日本製鉄731.0%、JFE72.5%と両社とも通常より高い水準になった期だけに、方針と実績の違いを読む際も当期の利益水準の影響を切り分ける必要があります。
人と組織
連結従業員数は日本製鉄が138,453人、JFEホールディングスが61,628人(いずれも2026年3月期)で、日本製鉄はUSスチールの連結化を主な理由に前期比24,608人増えています。提出会社単体の平均年間給与は日本製鉄が約909万円、平均年齢41.3歳、平均勤続年数19.5年です。JFEの単体数値は平均年間給与約1,228万円、平均年齢48歳、平均勤続年数23.5年ですが、提出会社は持株会社で単体従業員数は60人にとどまるため、日本製鉄の単体数値とそのまま比べることはできません。
沿革から見る現在地
日本製鉄の流れは1950年に八幡製鐵株式会社と富士製鐵株式会社がそれぞれ発足したことに始まり、公式会社概要の設立は1950年4月1日とされています。2012年に新日本製鐵と住友金属工業の統合により新日鐵住金が誕生し、2019年に社名を日本製鉄に変更しました。2025年6月19日の開示では米国USスチールの買収を完了して連結子会社化しており、2026年3月期には2030中長期経営計画を策定したことが決算短信に記載されています。
JFEホールディングスは2002年9月に日本鋼管と川崎製鉄が株式移転により設立し、2003年に事業をJFEスチール、JFEエンジニアリング等の事業会社に再編しました。2008年にユニバーサル造船を子会社化、2012年にJFE商事を株式交換により完全子会社化、2013年にジャパン マリンユナイテッドが発足し、2022年に東証プライム市場へ移行して商号をJFEホールディングスに変更しています。2社の統合で生まれた持株会社としての成り立ちが、現在の3事業体制につながっています。
読むときの注意点
- 2026年3月期は両社とも一時的な要因の影響が大きい期です。日本製鉄の当期利益にはUSスチール合併に伴う事業再編損等の影響があり、配当性向731.0%も利益急減によるものです。JFEの営業利益には京浜地区の土地活用に伴う整備推進費など個別開示項目の損失が含まれます。単年度の当期利益だけで通常の収益力を判断しないよう注意が必要です。また事業利益は両社とも会社定義の指標であり、営業利益とは別の数値として示されています。
- 人の数字では、JFEホールディングスの単体は従業員数60人の持株会社であり、平均年間給与約1,228万円はグループ全体の平均ではありません。時価総額や配当利回りは2026年10月30日時点のスナップショットであり、日本製鉄の株価や配当は2025年10月1日に実施された1株を5株とする株式分割を考慮した表示になっています。
まとめ
まとめると、2026年3月期の日本製鉄は売上収益10兆632億円とUSスチールの連結化で規模を広げた一方、当期利益は172億円まで低下しました。JFEホールディングスは売上収益4兆5,393億円と規模では半分以下ながら当期利益702億円を確保し、商社事業が最大のセグメント利益を上げました。規模の広げ方と、鉄鋼以外を含めた利益の出所の違いが要点です。
数字の出典と確認日は各社の企業ページに記載しています(この比較の確認日: 2026/11/05)。