デンソーとアイシンの違い
一言でいうと: トヨタグループの部品大手、デンソーと駆動系に強いアイシン
2026年3月期は売上収益・営業利益ともデンソーがアイシンを上回り、営業利益率も7.3%対4.5%と差があります。所在地別ではデンソーは日本以外が約59%、アイシンは約50.8%と、海外比率にも開きがあります。単体の平均年収はデンソー約915万円、アイシン約777万円です。
なぜこの2社を比べるのか: 愛知県刈谷市に本社を置くトヨタグループの自動車部品大手同士です。事業を所在地別に開示する両社について、規模、地域別の姿、収益性を比べます。
デンソーの事業の仕組み
デンソーの事業は所在地別に日本、北米、アジア、欧州、その他に分かれ、いずれも自動車部品等の開発・製造・販売です。2026年3月期の外部顧客への売上収益は日本3兆0,879億円(連結売上収益7兆5,400億円の41.0%)、北米2兆0,124億円(26.7%)、アジア1兆6,222億円(21.5%)、欧州6,915億円(9.2%)、その他1,260億円(1.7%)で、日本以外が約4兆4,521億円と約59.0%を占めます。レコードでは製品分野別の売上は示されておらず、地域の広がりが事業の姿を表しています。
利益の地域差については、決算短信の要約で日本が減益となる一方、北米・欧州・アジアが増益となったことが示されています。売上では日本が最大の地域でありながら、当期は海外の地域が利益の増加を担った形です。なおアイシンと異なり、デンソーのレコードには所在地別のセグメント利益の金額は掲載されていないため、地域ごとの利益額そのものを両社で比べることはできません。
アイシンの事業の仕組み
アイシンの事業も所在地別に日本、北米、中国、アセアン・インド、欧州、その他に分かれ、自動車部品等の開発・製造・販売を行います。2026年3月期の外部顧客への売上収益は日本2兆5,181億円、セグメント利益803億円が最大で、北米は外部売上1兆1,812億円、セグメント利益391億円と続きます。日本と北米で売上の大半を占める構成です。
規模の小さい地域の利益が目立ちます。中国は外部売上5,661億円、セグメント利益307億円、アセアン・インドは外部売上5,443億円、セグメント利益696億円と、日本に次ぐ利益額で利益率が最も高い地域とされています。欧州は外部売上2,687億円、セグメント利益41億円、その他は外部売上395億円、セグメント利益42億円です。会社全体では日本以外が約2兆5,997億円と連結売上収益5兆1,178億円の約50.8%を占め、デンソーより国内比重が高い構成です。
| 項目 | デンソー | アイシン |
|---|---|---|
| 売上高 | 7兆5,400億円(2026年3月期) | 5兆1,178億円(2026年3月期) |
| 営業利益 | 5,525億円(2026年3月期) | 2,288億円(2026年3月期) |
| 営業利益率 | 7.3%(2026年3月期) | 4.5%(2026年3月期) |
| 当期利益 | 4,438億円(2026年3月期) | 1,717億円(2026年3月期) |
| 時価総額 | 5兆4,216億円(2026-10-30時点) | 1兆5,108億円(2026-10-30時点) |
| PER | 12.2倍(2026-10-30時点) | 10.6倍(2026-10-30時点) |
| ROE | 8.5%(2026年3月期) | 8.2%(2026年3月期) |
| 自己資本比率 | 62.9%(2026年3月期) | 48.8%(2026年3月期) |
| 有利子負債 | 8,113億円(2026年3月期) | 6,213億円(2026年3月期) |
| 現金及び現金同等物 | 1兆1,891億円(2026年3月期) | 5,924億円(2026年3月期) |
| 売上高(予想) | 7兆6,700億円(2027年3月期 通期予想(決算短信)) | 5兆2,500億円(2027年3月期 通期予想(決算短信)) |
| 年間配当 | 67円(2026年3月期) | 70円(2026年3月期) |
| 配当利回り | 3.97%(2026-10-30時点) | 3.6%(2026-10-30時点) |
| 平均年収 | 915万円(2026年3月期(提出会社単体の平均年間給与)) | 777万円(2026年3月期(提出会社単体の平均年間給与)) |
| 平均年齢 | 44.8歳(2026年3月期(提出会社単体)) | 40.7歳(2026年3月期(提出会社単体)) |
| 平均勤続年数 | 22.9年(2026年3月期(提出会社単体)) | 17.3年(2026年3月期(提出会社単体)) |
| 従業員数(連結) | 154,716人(連結従業員数(2026年3月期)) | 113,292人(連結従業員数(2026年3月期)) |
| 決算月 | 3月 | 3月 |
| 創業 | 1949年12月 | 1965年8月 |
| 本社 | 愛知県刈谷市昭和町1-1 | 愛知県刈谷市朝日町二丁目1番地 |
| 証券コード | 6902 | 7259 |
対象期は原則として両社とも2026年3月期の数値です。
売上高
営業利益
営業利益率
当期利益
時価総額
PER
ROE
自己資本比率
有利子負債
現金及び現金同等物
売上高(予想)
年間配当
配当利回り
平均年収
平均年齢
平均勤続年数
従業員数(連結)
決算月
創業
本社
証券コード
グラフで比べる
2社の違いを読み解く
両社とも事業の開示は所在地別が中心です。デンソーは2026年3月期、外部顧客への売上収益で日本が3兆0,879億円と連結の41.0%、北米が2兆0,124億円で26.7%、アジアが1兆6,222億円で21.5%、欧州が6,915億円で9.2%、その他が1,260億円で1.7%でした。日本以外が約59%を占め、決算短信では日本が減益となる一方、北米・欧州・アジアが増益となったことが示されています。地域の分散が進んだ構成です。
アイシンも所在地別で、日本が外部売上2兆5,181億円と約半分を占め、北米1兆1,812億円、中国5,661億円、アセアン・インド5,443億円、欧州2,687億円、その他395億円が続きます。日本以外は約50.8%と、デンソーより国内の比重が高くなっています。地域ごとの利益ではアセアン・インドがセグメント利益696億円と、日本の803億円に次ぐ大きさで、売上規模の割に利益が大きい地域になっています。
成り立ちは対照的です。デンソーは1949年にトヨタ自動車工業の電装部門が分離独立して日本電装株式会社として設立され、1953年にドイツのロバート・ボッシュ社と電装品に関する技術導入契約を締結し、1996年に株式会社デンソーへ商号変更しました。アイシンは1965年に愛知工業と新川工業の合併でアイシン精機として発足し、1969年に米国ボーグ・ワーナー社との合弁でAT専門のアイシン・ワーナーを設立、2021年にその後継であるアイシン・エィ・ダブリュを吸収合併して株式会社アイシンとなりました。
地域別の利益の出方を掘り下げると、アイシンのアセアン・インドは外部売上5,443億円に対するセグメント利益696億円で、割合は約12.8%と所在地別で最も高くなっています。中国も外部売上5,661億円、セグメント利益307億円です。一方、日本は外部売上2兆5,181億円、セグメント利益803億円で割合は約3.2%、北米は1兆1,812億円、391億円で約3.3%です。つまりアイシンは売上の中心である日本と北米の利益率が低く、規模の小さいアセアン・インドが高い利益率で補う構成が見えます。
違いのポイント
- デンソーは2026年3月期の売上収益7兆5,400億円、営業利益5,525億円で営業利益率7.3%
- アイシンは売上収益5兆1,178億円、営業利益2,288億円で営業利益率4.5%
- 所在地別の海外比率はデンソーが日本以外約59%、アイシンが日本以外約50.8%
- アイシンのアセアン・インドは外部売上5,443億円、セグメント利益696億円で利益率が所在地別で最も高い
- 両社とも本社は愛知県刈谷市で、連結従業員数はデンソー154,716人、アイシン113,292人
財務と株主還元
2026年3月期の連結業績は、規模と収益力のいずれもデンソーが上回りました。デンソーは売上収益7兆5,400億円(7兆5,400億円、↑ 前期比5.3%増)、営業利益5,525億円(同6.5%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益4,438億円で増収増益となり、営業利益率は7.3%です。アイシンは売上収益5兆1,178億円(5兆1,178億円、同4.5%増)、営業利益2,288億円(同12.7%増)、当期利益1,717億円(同59.6%増)と増益率は高いものの、営業利益率は4.5%にとどまります。
財務では、親会社所有者帰属持分比率はデンソー62.9%、アイシン48.8%、ROEはデンソー8.5%、アイシン8.2%と近接しています。有利子負債はデンソー8,113億円、アイシン6,213億円、現金同等物はデンソー1兆1,891億円、アイシン5,924億円です。株主還元はデンソーが年間配当67円、配当性向41.1%、アイシンが年間配当70円、配当性向30.1%と、1株配当は近接しています。2026年10月30日時点のスナップショットでは時価総額はデンソー54,216億円、アイシン15,108億円、配当利回りはデンソー3.97%、アイシン3.6%でした。2027年3月期予想はデンソーが売上収益7兆6,700億円、営業利益5,000億円、アイシンが売上収益5兆2,500億円、営業利益2,350億円としていますが、会社予想の数値です。
予想の置き方では、デンソーは2027年3月期に売上収益の増加を見込む一方で営業利益は5,000億円と2026年3月期の5,525億円を下回る予想を示し、年間配当は74円への引き上げを予想しています。アイシンは売上収益5兆2,500億円、営業利益2,350億円、当期利益1,500億円と、営業利益は増益、当期利益は減益の予想で、年間配当は75円を予想しています。両社とも配当予想は2026年3月期の実績(デンソー67円、アイシン70円)を上回る水準ですが、あくまで会社予想の数値です。
人と組織
連結従業員数はデンソーが154,716人、アイシンが113,292人(いずれも2026年3月期)で、デンソーが約4.1万人多く、売上規模の差とおおむね対応します。提出会社単体の平均年間給与はデンソーが約915万円、アイシンが約777万円で差は約138万円です。平均年齢はデンソー44.8歳、アイシン40.7歳、平均勤続年数はデンソー22.9年、アイシン17.3年と、デンソーの方が年齢・勤続とも高く、勤続では5.6年の差があります。
なお両社の単体の数値は提出会社の平均であり、連結従業員数15万人超と11万人超というグループ全体の平均ではありません。デンソーについては、提出会社の平均勤続年数22.9年が長く、平均年齢44.8歳もアイシンより4.1歳高いことがレコードの特徴として示されています。
沿革から見る現在地
デンソーは1949年12月にトヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車株式会社)から分離独立し、資本金1,500万円をもって日本電装株式会社を設立しました。1951年に名古屋証券取引所へ上場し、1953年には東京・大阪の各証券取引所への上場と、ロバート・ボッシュ社との電装品に関する技術導入契約の締結がありました。1961年にデミング賞を受賞し、1996年に株式会社デンソーへ商号変更しています。トヨタの電装部門が出自である点が成り立ちの特徴です。
アイシンは1965年8月に愛知工業株式会社が新川工業株式会社を吸収合併してアイシン精機株式会社となり、1969年に米国ボーグ・ワーナー社との合弁によりAT専門のアイシン・ワーナー株式会社(後のアイシン・エィ・ダブリュ)を設立しました。2001年にはデンソー、住友電気工業、トヨタ自動車と共同出資で株式会社アドヴィックスを設立しています。2021年にアイシン・エィ・ダブリュを吸収合併して株式会社アイシンへ変更し、2025年にはアイシン化工株式会社を吸収合併しました。合併を重ねて現在の形になった点がデンソーとの違いです。
読むときの注意点
- 両社とも事業の開示は所在地別であり、製品分野別の売上や利益はレコードに示されていません。地域同士の比較はできますが、製品ごとの強弱をこの開示から読み取ることはできません。またデンソーについては所在地別のセグメント利益の金額がレコードに掲載されていないため、地域別の利益額はアイシン側の数字のみで確認することになります。
- 時価総額や配当利回りは2026年10月30日時点のスナップショットであり、現在の値ではありません。2027年3月期の数値は会社予想であり、実績とは分けて読む必要があります。
まとめ
まとめると、2026年3月期のデンソーは売上収益7兆5,400億円、営業利益率7.3%と規模と収益力でアイシンを上回り、日本以外の売上比率も約59%と高くなっています。アイシンは売上収益5兆1,178億円、営業利益率4.5%ながら当期利益が↑ 前期比59.6%増と伸び、アセアン・インドなど地域ごとの利益の出方に特徴があります。同じ刈谷市に本社を置く部品大手でも、規模と地域構成に差がある点が要点です。
数字の出典と確認日は各社の企業ページに記載しています(この比較の確認日: 2026/11/05)。