ビルや橋、トンネルといった大きな建設物のニュースでよく聞く「ゼネコン」という言葉。英語の「general contractor(総合請負業者)」を縮めた和製英語で、法律に定義がある言葉ではありません。一般には、発注者から工事を直接請け負う「元請」の立場で、企画・設計・施工、さらには維持管理までを一貫して担える大きな総合建設業者を指します。このコラムでは、国土交通省の建設業許可の仕組みからゼネコンの輪郭を確認し、「スーパーゼネコン」と呼ばれる​5社の顔ぶれと規模を、決算の数字で見ていきます。

建設業許可から見る「元請」と「一式工事」

建設工事の完成を請け負う営業には、原則として建設業法に基づく建設業の許可が必要です(軽微な工事のみを請け負う場合を除きます)。許可は工事の種類ごとの「業種別」が基本で、土木一式工事と建築一式工事の2つの一式工事に、27の専門工事を加えた全29種類に分かれています。一式工事とは、複数の専門工事を組み合わせて建物や土木構造物を完成させる工事のことで、大規模な工事を元請として取りまとめる会社は、この一式工事の許可を持つことが前提になります。ゼネコンと呼ばれる会社は、まさにこの一式工事を軸に、設計部門や技術研究所まで自社に抱えているのが特徴です。

つまり「特定建設業」の許可は、大規模な工事を元請として受け、専門工事会社への発注を束ねる会社に求められる資格です。ゼネコンの仕事は、自社の社員が直接手を動かして建てることよりも、設計、工程・品質・安全の管理、そして多数の専門工事会社の調整に重心があります。現場で実際に施工する専門工事会社との分業の上に成り立っている点が、製造業の「メーカー」とは違う建設業ならではの構造です。

スーパーゼネコン5社——顔ぶれと上場・非上場

業界では、規模と実績で抜きん出た​5社を「スーパーゼネコン」と呼ぶのが通例です。顔ぶれは、鹿島建設、大林組、清水建設、大成建設、竹中工務店の​5社です。このうち東京証券取引所に上場しているのは​4社で、竹中工務店だけが非上場です。竹中工務店は大阪に本社を置き、建築を中心とする会社で、非上場のため株価や時価総額はありませんが、会社が公表するデータでは2024年12月期の連結売上高は​1兆6,001億円と、​1兆円を超える規模です。決算期が12月と、3月決算の上場​4社とは異なる点にも注意が必要です。

上場4社の規模——2026年3月期の売上高で見る

この並びは2026年3月期という特定の年度の売上高に基づくもので、受注工事の進み具合によって年度ごとに入れ替わります。順位そのものよりも、​4社とも売上高が​2兆円を超え、国内の建設投資の中で大規模・高難度の工事を受けられる会社が限られていること、そして各社が海外事業や開発事業(不動産)など建設請負以外の柱を育てている点が共通しています。なお竹中工務店を含めた​5社の比較は、決算期の違い(12月期と3月期)があるため、単純な順位づけはできません。

ゼネコンと専門工事会社、中堅ゼネコンの違い

建設業の会社は、ゼネコンの下で電気、空調、内装などの専門工事を担う「専門工事会社(サブコン)」、地域を地盤に元請工事も手がける「中堅ゼネコン」「地場ゼネコン」など、役割で呼び分けられます。違いを生むのは、設計機能と技術開発力、そして何より「元請として工事全体の責任を負える体制」です。スーパーゼネコンは自社に設計部門と技術研究所を持ち、発注者の企画段階から関わる提案型の受注も行います。一方で、工事量の変動や人手不足への対応は、協力会社である専門工事会社との関係なしには成り立ちません。2024年4月からは建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、週休2日の推進や工期の適正化が業界全体の課題になっています。

4社の事業の中身——請負一本ではない収益の柱

決算短信の事業別の記述を見ると、​4社とも建設請負が中核でありながら、その周りに異なる事業を組み合わせています。鹿島建設は土木事業・建築事業を中核に、開発事業等と国内・海外の関係会社で事業を行います。大林組は国内建築・海外建築・国内土木・海外土木の建設事業に不動産事業などを加えた構成です。大成建設は土木・建築・開発を中核とし、2026年3月期には東洋建設の連結子会社化もありました。清水建設も建築・土木の請負を柱とします。同じ「ゼネコン」でも、土木と建築の比率、海外の広がり、開発・不動産の厚みが異なり、景気や資材価格の影響の受け方は一様ではありません。

従業員数にも規模感が表れます。2026年3月31日現在の連結従業員数は、清水建設が​22,278人、大成建設が​18,503人(いずれも有価証券報告書に基づく公表値)など、​1社で​2万人前後の人が働く組織です。ただし現場の施工は協力会社が担う部分が大きいため、会社の規模を従業員数だけで測ることはできません。売上高、受注高、従業員数、事業構成を合わせて見ることが、ゼネコン各社の実像に近づく読み方です。

ゼネコンの決算を読むときは、売上高にあたる「完成工事高」だけでなく、受注したもののまだ完成していない工事の残高である「手持工事高(受注残)」も合わせて見ることが大切です。建設業は受注産業で、​1件の工事が数年にわたることも珍しくありません。当期の売上は過去の受注の結果であり、将来の売上は現在の受注残に表れます。受注競争の激しさや資材・労務費の上昇が利益を圧迫する局面では、完成工事の利益率の動きも各社の差となって表れます。

もう一つ、ゼネコン各社の違いが見えるのが技術開発への姿勢です。大規模な建築物やインフラを安全に造る技術、省人化や脱炭素に向けた工法の開発は、元請であるゼネコンが担ってきた領域であり、各社は技術研究所を持ち、大学や専門工事会社と共同で開発を進めています。

ゼネコンという言葉は便利な通称ですが、その実態は建設業許可の「一式工事」と「特定建設業」という制度の上に立つ、元請としての総合力です。会社を比べるときは、売上高の大きさだけでなく、土木と建築の比率、海外や開発事業の広がり、設計・技術への投資といった中身を見ると、各社の個性が浮かび上がります。

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