株主と役員。どちらも会社に深く関わる立場ですが、その役割は大きく異なります。株主はお金を出す側、役員は経営を任される側です。このコラムでは、会社法の条文をもとに、両者の違いと、株主総会・取締役会という二つの会議の役割を整理します。
株主とは ――出資し、 議決権を 持つ人
株主は、株式会社に出資し、株式を持つ人です。会社法第104条は、株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とすると定めています。事業がうまくいかなくても、株主が責任を負うのは出資した範囲までという、いわゆる有限責任の仕組みです。
株主の中心的な権利が議決権です。第308条は、株主は株主総会において、その有する株式1株につき1個の議決権を有すると定めています(単元株式数を定款で定めている場合は、1単元の株式につき1個の議決権です)。出資の大きさに応じて会社の意思決定に参加できることが、株主の立場の核です。
議決権は、持っている株式の数に応じて与えられます。そのため、発行済株式の過半数を持つ株主は、株主総会の多くの決議を左右できる立場にあります。会社の支配関係を語るときに「過半数の株式を持つ」ことが重視されるのは、この仕組みのためです。
株主の権利行使の場面の多くは、株主総会に集約されています。普段の経営に株主が直接口を出す仕組みにはなっておらず、株主は総会を通じて、役員の選任や重要な事項の決議という形で会社に関与します。
役員とは ――株主総会で 選ばれる 経営の 担い手
役員とは、会社法第329条にいう取締役、会計参与および監査役を指します。同条は、役員および会計監査人は、株主総会の決議によって選任すると定めています。つまり役員の地位は、株主の意思によって与えられ、任期が終われば再び株主総会で選び直される関係にあります。
役員は会社の経営を担い、業務の執行やその監督を行いますが、会社の所有者ではありません。出資者である株主が経営者を選び、経営者は株主に対して責任を負う。この「所有と経営の分離」が、株式会社の基本構造です。
役員の顔ぶれが株主総会で決まるということは、経営がうまくいかない場合に、株主が役員を選び直すことで会社の方向を正す道が用意されている、ということでもあります。株主総会は、会社の一年を振り返る場であると同時に、経営者を評価し直す場でもあるのです。
なお、「役員」という言葉は会社法の条文でも、取締役・会計参与・監査役をまとめた呼び名として使われています(第329条)。これに対して、執行役員や顧問・相談役といった肩書は、会社が独自に用いる呼称であることが多く、会社法の「役員」の定義とは区別して理解する必要があります。
- 株主 ― 出資者。責任は株式の引受価額を限度とする有限責任。原則として1株1議決権で会社の意思決定に参加する
- 役員 ― 取締役・会計参与・監査役。株主総会の決議によって選任され、業務の執行とその監督を担う
株主総会とは ――いつ 開き、 何を決めるか
株主総会は、株主が集まって会社の重要事項を決議する場です。会社法第296条は、定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないと定めています。株主総会は、必要がある場合にはいつでも招集できる臨時株主総会と合わせて運用されます。役員の選任も株主総会の決議事項であり、招集の通知は、原則として株主総会の日の2週間前までに株主に発しなければなりません(第299条)。また、総株主の議決権の3パーセント以上の議決権を6か月前から引き続き有する株主は、取締役に対して株主総会の招集を請求できるとされています(第297条)。
決議できる事項にも線引きがあります。取締役会を置く会社では、株主総会で決議できるのは、会社法の規定する事項と定款で定められた事項に限られます。日常の業務執行の決定は取締役会に委ね、株主総会は役員の選任など根本的な事項に集中するという分担です。
決算が終わってから3か月以内に定時総会を開く会社が多い背景には、基準日の制度があります。第124条は、株式会社は基準日を定めて、基準日において株主名簿に記載されている株主を、権利を行使することができる者と定めることができるとし、基準日株主が行使することができる権利は、基準日から3か月以内に行使するものに限ると定めています。決算日を基準日とする会社では、議決権を行使できる株主が決算日時点の株主として確定するため、定時株主総会は決算後3か月以内に開く日程が組まれることになります。
臨時株主総会が「必要がある場合にはいつでも」招集できることは、会社の重要な判断を年1回の定時総会まで待たなくてよいことを意味します。大きな組織の変更や役員の補充など、時期を逃せない事項は、臨時総会で決議されます。
取締役会とは ――「役員会」の 正式な姿
日常の会話では「役員会」という言葉が使われることがありますが、会社法に「役員会」という名称の会議体はありません。正式には取締役会です。第362条は、取締役会はすべての取締役で組織するとし、その職務を、取締役会設置会社の業務執行の決定、取締役の職務の執行の監督、代表取締役の選定および解職と定めています。重要な財産の処分や多額の借財など、重要な業務執行の決定は取締役個人に委任できないとされている点も特徴です。
委任できない事項として条文が挙げるのは、重要な財産の処分および譲受け、多額の借財、支配人その他の重要な使用人の選任および解任、支店その他の重要な組織の設置・変更・廃止などです。会社の土台を動かす決定は、取締役会という全員の場で決めることが求められています。
実際に業務を執行するのは、取締役会で選定された代表取締役などであり(第363条)、これらの取締役は、3か月に1回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければなりません。取締役会の招集の通知は、原則として取締役会の日の1週間前までに発することとされています(第368条)。株主総会が年1回の大きな意思決定の場であるのに対し、取締役会は日常の経営を動かし、監督する会議です。
取締役会は、各取締役が招集できるとされています(第366条)。取締役会が定期的に開かれる会社が多い背景には、代表取締役などが3か月に1回以上、職務の執行の状況を報告しなければならないというルールとの関係があります。
株主と 役員の 関係を どう見るか
ここまでの条文を並べると、株主と役員の関係は「任せる側」と「任される側」の構造をしていることがわかります。株主は出資という形でリスクを引き受け、見返りとして議決権を持ちます。役員は経営の権限を与えられる代わりに、取締役会による監督を受け、定期的に報告し、任期ごとに株主総会で選び直されます。
この構造は、大企業だけの話ではありません。株主が一人しかいない中小の株式会社でも、法律の建て付けは同じです。株主総会を開き、役員を選ぶという手続は、会社という器を正しく保つための基本動作として、規模を問わず求められます。
株主は出資と議決権で会社を支え、役員は株主総会で選ばれて経営を担います。株主総会と取締役会は、この「選ぶ側」と「任される側」の関係を形にした二つの会議です。ニュースで総会や取締役会の言葉を見かけたら、誰が何を決める場なのかを思い浮かべると、会社の動きが見えてきます。
出典(3件)
- 会社法(日本法令外国語訳データベースシステム) (2026/11/06確認)
- 日本公証人連合会「定款認証」 (2026/11/06確認)
- 法務省「株式会社の設立手続(発起設立)について」 (2026/11/06確認)