求人票や決算資料で「RSU」という言葉を見かけることが増えました。RSUはRestricted Stock Unitの略で、日本語では譲渡制限付株式ユニットと訳されます。名前は「株式」とついていますが、付与された時点では株式そのものはまだ手元にありません。一定の条件を満たした後に株式を受け取る「約束」が付与される制度です。このコラムでは、RSUの仕組みを、実際に制度を導入しているソニーグループの開示資料を例に読み解きます。

RSUの流れ — 付与、権利確定、交付の3段階

RSUの基本的な流れは3段階です。第1段階は「付与」です。会社が対象者に、将来交付する株式数に対応するユニット(単位)を割り当てます。この時点では株式は発行・交付されておらず、対象者は株主ではありません。第2段階は「権利確定」です。付与契約で定めた期間、継続して勤務することなどの条件を満たすと、ユニットの権利が確定します。第3段階が「交付」で、確定したユニット数と同数の株式が対象者に交付され、ここで初めて株主になります。

権利確定までの間、ユニットは現金化できません。ソニーグループの開示でも、対象者はRSUについて第三者への譲渡、質入その他の一切の処分をすることができないと明記されています。また、権利確定日までにRSUを放棄した場合など、会社が定める一定の事由に該当すると、未確定のRSUは消滅します。つまりRSUは、条件を満たすまで「確定しない報酬」であり、長く働くことへの動機付け(リテンション)として設計されているのが特徴です。経済産業省の「インセンティブ報酬ガイダンス」(2025年2月)でも、インセンティブ報酬の目的の一つとして、将来の貢献への動機付けとリテンションが挙げられています。

事前交付型の譲渡制限付株式(RS)との違い

混同しやすいのが、RS(リストリクテッド・ストック/譲渡制限付株式)です。経済産業省のガイダンスは、一定期間の譲渡制限が付された現物株式を事前に交付するものをRS(事前交付型)、あらかじめ交付株式数を定め、一定期間経過後にその株式を交付するものをRSU(事後交付型)と整理しています。決定的な違いは「株式が先に手元にあるかどうか」です。RSでは付与時点で株式が交付されるため、譲渡は制限されるものの株主としての地位は早くから生じます。一方、RSUでは交付を受けるまでは株式が存在せず、株主ではありません。

もう一つの違いは、条件を満たせなかった場合の扱いです。RSUは権利が確定しなければ株式は​1株も交付されません。RSはすでに株式が交付されているため、条件未達の場合には会社が株式を取得する仕組みなどを別途設ける必要があります。運用の分かりやすさから、グローバルに展開する企業や、海外の子会社の役員・従業員にも同じ設計で付与したい企業で、RSUが選ばれる例が見られます。

ソニーグループの開示で見る実際の設計

ソニーグループは、2022年度からRSUによる事後交付型株式報酬制度を導入しています。2026年10月30日付の開示(「譲渡制限付株式ユニット(RSU)の付与に関するお知らせ」)では、第24回と第25回のRSU付与が公表されました。第25回は、当社の従業員​408名、子会社の取締役その他の役員​59名、子会社の従業員​3,709名の合計​4,176名を対象に、最大​6,149,818株に相当するRSUを付与する内容です。付与日は2026年11月25日の予定とされています。

権利確定のスケジュールは回によって異なります。第25回では、付与日から1年後、2年後、3年後の各時点で、付与したユニット数の3分の1ずつが順次権利確定する設計です。これに対し第24回(子会社の役員・従業員​13名、最大​265,270株相当)は、付与日から3年後に全てが権利確定する設計になっています。株式の交付は、権利確定後に対象者へ支給される金銭報酬債権の現物出資と引換えに、自己株式を処分する方法で行われます。開示資料には、死亡など正当な理由で地位を喪失した場合の取扱いも定められており、「条件を満たせば交付されるが、途中で退職すれば原則として失う」というRSUの基本構造がそのまま読み取れます。

交付の方法にも注目できます。会社が株式を渡す方法には、市場で買い付けるなどして保有する自己株式を処分する方法と、新しい株式を発行する方法があります。ソニーグループの今回の開示は自己株式の処分による方法であり、交付は権利確定後の一定の時期に行われます。開示には処分の相手方(対象者)の一覧や、確定したユニット数に応じた交付株式数の考え方も示されており、制度が「何株まで発行され得るか」を投資家が把握できる形になっています。株式報酬は、対象者にとっては報酬であると同時に、既存株主にとっては株式価値の希薄化につながり得るため、対象者数と株式数の開示は投資判断の材料にもなります。

ストックオプションとの違い

ストックオプションは「あらかじめ決めた価格(権利行使価額)で株式を買う権利」であり、利益が出るのは株価が行使価額を上回った場合に限られます。株価が下がれば権利は無価値になり得ます。これに対しRSUには権利行使価額がなく、権利が確定すれば、その時点の株価相当の株式がそのまま交付されます。株価が下がっても株式の価値がゼロになることは(会社そのものが存続する限り)ありません。このためRSUは、株価の上昇幅ではなく「株式そのものの価値」を報酬にする制度だと言えます。

税務の考え方 — 課税は「株式を受け取った時点」が中心

税務では、付与の時点ではまだ株式を受け取っておらず経済的な利益が確定していないため、課税関係は生じないのが一般的な整理です。課税の中心になるのは、権利が確定して株式の交付を受けた時点です。この時点で、その時点の株価相当額が、労務の対価として給与所得の対象になると整理されます。国税庁の「ストックオプションに対する課税(Q&A)」でも、譲渡制限の付された株式報酬については、制限のために所得を実現できない間は課税せず、制限が解けて利益を享受できる時点で所得を認識するという考え方が示されています。その後、交付された株式を売却した場合には、交付を受けた時点の価額を基準として、売却益が株式の譲渡所得として課税の対象になります。

ただし、実際の取扱いは制度の設計、付与する会社と勤務する会社の関係、勤務地の国などによって異なります。特に海外の親会社から付与される場合は、日本の勤務先の給与に含まれず源泉徴収されていないこともあり、確定申告が必要になる場合があります。RSUを受け取る立場の方は、付与契約書で権利確定の条件とスケジュールを確認し、税務については勤務先の案内や税務署・税理士への確認が欠かせません。

RSUは「約束→確定→交付」という3段階で理解すると、開示資料が読みやすくなります。企業の開示では、付与の回ごとに対象者数、株式数、権利確定までの期間が示されます。ソニーグループのように毎年のように新しい回が付与される企業では、株式報酬が一回限りの制度ではなく、人材への継続的な投資として運用されていることが分かります。ニュースでRSUの文字を見たら、誰に、何株分が、いつ確定する条件で付与されたのかを確認してみてください。

関連する企業(1社)
出典(3件)