「令和9年(2027年)4月から、飲食料品の消費税が​1%になる」。この話を聞いて、決まったことだと思っていませんか。先に結論を書きます。2026年11月5日時点で、これは国会で審議中の「法案」の段階であり、成立した制度ではありません。国税庁の特設サイト自身が「内容については、今後、法案が国会に提出され、審議を経た上で可決・成立した場合のものです」と明記しています。このコラムでは、案の段階であることを前提に、中身と、成立した場合に何が変わるのかを整理します。

いまどの段階か — 大綱の決定から法案の審議まで

つまり、案の骨格は政府として固まって国会に出されたものの、法律として決まるかどうかは今後の審議次第、という段階です。以下で述べる税率や期間は、すべて「法案がこの内容で成立した場合」の話として読んでください。

案の中身 — 2年間だけ、飲食料品を8%から1%へ

法案と大綱が示す案の柱は次の通りです。対象は国内で行われる飲食料品の譲渡と、保税地域から引き取られる飲食料品です。税率は消費税​0.78%に地方消費税​0.22%相当を合わせた​1%で、現在の軽減税率​8%(消費税6.24%+地方消費税1.76%)から7ポイント下がります。期間は令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間に限られ、その後は​8%に戻る設計です。給付付き税額控除の本格導入(令和11年度)までの「つなぎ」と位置づけられています。

なお、税率を​1%に下げる前の飲食料品の税率は、消費税​6.24%と地方消費税​1.76%を合わせた​8%です(2019年10月の軽減税率導入時からの姿)。案の​1%は、消費税​0.78%と地方消費税​0.22%に分解されます。「​8%から​1%へ」という見出しの裏側には、この国税と地方税の配分の設計があることも、大綱と法案を読むと分かります。

対象になるもの、ならないもの

法案が対象とする「飲食料品」は、現在の軽減税率(8%)の適用対象となっている飲食料品と同じ範囲と定義されています。現在の線引きは国税庁のタックスアンサー(No.6102)で確認できます。

同じ弁当でも、持ち帰れば案の対象、自宅ではなく店内で食べれば外食として​10%のまま、という線引きは現在の制度と同じです。ただし税率差は大きく広がります。現在、持ち帰り(8%)と店内飲食(10%)の差は2ポイントですが、案が実施されれば​1%と​10%で9ポイント差になります。

成立した場合、何が変わるのか

家計への影響は、計算で確認できます。税抜価格が変わらないとすれば、税抜​1,000円の飲食料品は、現在は税込​1,080円、案の期間中は税込​1,010円となり、1回あたり​70円の差が出ます。総務省統計局の家計調査(2025年平均)では、二人以上の世帯の食料への支出は月​94,895円、消費支出全体(月314,001円)の3割近くを占めます。ただし、この「食料」には外食(月16,563円)や酒類(同3,784円)が含まれており、案の対象範囲と一致するものではありません。対象分だけを取り出した正確な軽減額は、この統計からは計算できない点に注意してください。

企業側への影響も読み取れます。食品を扱う小売・外食・食品メーカーは、価格表示やレジ・システムの対応が必要になります。国税庁が事業者向けの説明や様式ドラフトを早い段階から公表しているのは、その準備期間を確保するためです。また、持ち帰りと店内飲食の税率差が9ポイントに広がれば、飲食店の価格設定や「持ち帰り需要」の動きにも影響しうる、というのが案の構造から言える範囲です。実際に値下げがそのまま価格に反映されるかどうかは、各社の価格政策次第であり、ここでは断定しません。

法案の条文で見る実施の設計

法案の条文(衆議院の議案本文)まで見ると、実施の細部が分かります。第2条は、対象を消費税法の別表第一第一号に掲げる飲食料品の譲渡とし、令和9年4月1日から令和11年3月31日までの間に行われるものについて、消費税法29条の規定にかかわらず税率を​0.78%とする特例を定めています。施行期日は附則で令和9年4月1日とされ、総額表示に関する特例の一部は令和9年2月1日から先行する設計です。

セットで導入される就業者負担軽減支援金については、法案第10条が、令和9年度分の支援金の総額は「税率を下げることによる飲食料品の消費税収入の見込額(地方消費税分を含む)を超えないよう考慮して定める」としています。つまり支援金の規模は、減税で減る税収の見込みと連動させる設計です。ただし、その見込額の具体的な数値は、法案や大綱の一次資料には書かれていません。

まだ決まっていないこと

このコラムは、案の段階の記録として書きました。飲食料品の消費税​1%は、成立すれば家計にも食品関連の企業にも大きな制度変更ですが、2026年11月5日時点では「審議中の法案」です。続報を追うときは、成立したかどうかと、財源の結論が出たかどうかを分けて確認することをおすすめします。

出典(5件)