「DX認定を取りました」「DX銘柄に選ばれました」「DXマーク認証を取得しました」――似た言葉が並びますが、これらは別々の仕組みです。国の法律に基づく認定、証券取引所も関わる選定、そして民間団体による認証。運営主体も、対象も、費用も異なります。混同したままでは、企業の発表の意味を正しく読み取れません。本稿では、経済産業省の「DX認定制度」、経済産業省・東京証券取引所・IPAの「DX銘柄」、そして一般社団法人中小企業個人情報セキュリティー推進協会(SP2)の「DXマーク認証」という3つの制度を、それぞれの公式情報に基づいて区別して解説します。

1つ目:国の制度「DX認定」

DX認定制度は、情報処理の促進に関する法律第28条に基づく国の認定制度です。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の案内によれば、デジタルガバナンス・コードの基本的事項に対応し、DX推進の準備が整っている(DX-readyである)と認められる事業者を、経済産業大臣が認定します。対象は法人・個人事業主を問わず全ての事業者で、公益法人等も含まれます。申請は年間を通じて受け付けられ、標準処理期間は60営業日、認定の有効期間は2年間で、更新申請は有効期間の満了する60日前までに行います。注目すべきは費用です。経済産業省・IPAの委員会資料によれば、認定申請や認定の維持にかかる費用はすべて無料です。認定を受けた事業者は認定事業者一覧で公表され、ロゴマークを使用できます。認定実績は積み上がっており、2025年10月時点で累計1,636者(大企業770、中小企業等866)が認定を受けています。

DX認定の基準になっているのが、経済産業省の「デジタルガバナンス・コード」です。2024年9月に改訂された同コード3.0では、柱となる考え方と「基本的事項」が示され、この基本的事項への対応がDX認定の基準と位置づけられています。これに対して、同コードの「望ましい方向性」は、DX銘柄やDXセレクションにおける評価基準として用いられます。つまり3つの仕組みは無関係ではなく、コードという共通の物差しのもとで、認定(準備が整ったか)と選定(取り組みが優れているか)が役割分担している関係にあります。

2つ目:選定の仕組み「DX銘柄」

DX銘柄は、経済産業省・東京証券取引所・IPAが共同で実施する、上場企業を対象とした選定の仕組みです。前身の「攻めのIT経営銘柄」(2015年開始)を引き継ぎ、2020年からDX銘柄として続いています。DX認定との決定的な違いは、これは企業が審査を受けて「取得する」認証ではなく、調査への回答をもとに優れた企業を「選ぶ」仕組みだという点です。経済産業省の公表では、DX銘柄2026として​30社(うちDXグランプリ3社)が選定され、あわせてDX注目企業​17社、DXプラチナ企業2026-2028として​2社が選ばれています(2026年4月10日発表)。なお、上場企業がDX銘柄の選定対象となるにはDX認定の取得が前提とされており、2つの制度は連動しています。中堅・中小企業向けには、自己推薦で応募できる「DXセレクション」という枠も用意されています。選定である以上、DX銘柄に「申請料」という概念は基本的に存在しません。

3つ目:民間団体の「DXマーク認証」

三つ目が、一般社団法人中小企業個人情報セキュリティー推進協会(SP2)が行う民間の認証制度「DXマーク認証」です。SP2自身のFAQでも、国のDX認定とは別の制度であることが説明されており、DXマーク認証はDX推進の度合いに加えて、情報・個人情報の取り扱いや組織運営まで含めて評価する点が特徴とされています。対象は法人・個人事業主で、認証期間は認証を受けた日から1年間です。手続きには、11種類の書類の提出に加えて、DX最高責任者テスト(30問・60分、合格ライン​70%、最大3回まで受験可)とDX推進人材テスト(60問・60分、合格ライン80%、受験は1回のみ)といったWebテスト、判定員によるオンライン調査(約1時間)が含まれ、認証までは平均3〜​4か月と案内されています。なお、認定DXアドバイザーとの支援契約がある場合は、DX推進人材テストが免除される取り扱いもあります。試験の合否が取得を左右する点は、書類中心の国のDX認定とは異なる、民間認証らしい特徴です。そして国のDX認定と異なり、こちらは有料の制度です。

3つを並べて見分ける

もう一つ押さえておきたいのは、3つの制度の「難しさ」の質が違うことです。DX認定が問うのは、デジタルガバナンス・コードに沿って経営者自身がDX推進の方向性を示し、体制を整えているかという「準備の到達度」です。DX銘柄は、その先にある取り組みの内容と成果を相対的に評価して選びます。DXマーク認証は、推進の度合いに加え、情報・個人情報の取り扱いや組織運営まで含めた幅広い観点から、試験と調査で判定します。同じ「DX」の看板でも、国の認定は入口の整備を、銘柄は先進事例の顕彰を、民間の認証は運用面まで含めた第三者評価を担っている、と理解すると位置関係が見通せます。

整理すると、見分け方はシンプルです。DX認定は「国の認定」で、法律に基づき、対象は全事業者、費用は無料、有効期間は2年。DX銘柄は「選定」で、上場企業の中から優れた取り組みを選ぶもので、企業がお金を払って取るものではありません。DXマーク認証は「民間の認証」で、SP2が独自の試験・調査で判定し、費用がかかり、認証期間は1年。企業のウェブサイトや名刺で「DX」の付く肩書を見かけたら、まずこの3つのどれなのか――運営主体はどこか、国の制度なのか民間の認証なのか――を確認する習慣を持つと、発表の意味合いを誤解せずに済みます。いずれの制度も、取得や選定そのものが目的ではなく、デジタル技術で経営を変えていく取り組みの到達点を示す目印です。肩書の種類とあわせて、その企業が具体的に何を変えたのかまで目を向けると、企業を見る解像度が上がります。

出典(5件)