会社は、登記をすることで初めて生まれます。思い立って名刺に「株式会社」と書くだけでは、会社にはなりません。このコラムでは、法務省の公式情報をもとに株式会社の設立手順をたどり、合同会社との違い、個人事業主との違いを整理します。

株式会社の設立手順――定款から登記まで

法務省の案内によれば、発起設立の場合、まず発起人が定款を作成し、発起人の全員が署名または記名押印します(会社法第26条)。定款は、会社の本店の所在地を管轄する公証人の認証を受けなければ、その効力を生じません(第30条)。次に、発起人は株式の引受け後、遅滞なく、出資に係る金銭の全額を払い込みます(第34条)。払込みを取り扱うのは、銀行などの払込取扱機関です。

発起設立とは、発起人が設立時に発行する株式の全部を引き受ける方法です。法務省が案内している株式会社の設立手続は、この発起設立を前提としたものです。発起人がそのまま設立後の株主になるため、少人数で会社を作る場合に向いた方法です。

定款は、会社の目的や商号、本店の所在地、資本金といった基本事項を定める、会社の根本規則です。公証人の認証は、その定款が正式な手続で作成されたことを確認する手続であり、株式会社では設立の必須の段階になっています。

その後、設立の登記を行います。法務省の案内では、設立の登記は、設立手続の調査が終了した日または発起人が定めた日のうち遅い日から2週間以内にしなければならないとされています(第911条)。そして株式会社は、本店の所在地において設立の登記をすることによって成立します(第49条)。登記が完了して初めて、会社は法人として活動を始めることができます。

設立の登記が完了すると、登記事項証明書を取得できるようになります。法人口座の開設や取引先との契約の場面では、この証明書が会社の存在を示す書類として使われます。

設立にかかる費用――登録免許税と認証手数料

設立の登記には登録免許税がかかります。国税庁の税額表によれば、株式会社の設立登記の登録免許税は、資本金の額に1000分の7をかけた額で、​15万円に満たないときは​1件につき​15万円です。資本金の額が小さくても、最低​15万円がかかる計算になります。

定款の認証手数料は、日本公証人連合会の案内によれば、資本金の額等が​100万円未満の場合は​3万円、​100万円以上​300万円未満の場合は​4万円、それ以外の場合は​5万円です。紙で作成した定款には収入印紙​4万円が必要ですが、電子定款の場合は不要とされています。なお、設立時の出資額に規制は設けられておらず、資本金​1円でも株式会社を設立することが可能だと案内されています。もっとも、設立直後の運転資金や取引先への信用といった実務の面では、資本金の額は事業の実態に合わせて考える必要があります。

登録免許税の計算例も見ておきます。資本金​300万円の株式会社では、​300万円に1000分の7をかけると​2万1,000円ですが、最低額が適用されるため、実際に納める登録免許税は​15万円です。計算額が​15万円を超えるのは、資本金がおよそ​2,143万円を超える場合からになります。これらの費用は設立のときに一度だけかかるものですが、会社の維持の過程では、決算や登記の変更などに応じた手続が別途発生します。

合同会社との違い

合同会社は、持分会社の一つです。法務省の案内によれば、合同会社では、社員になろうとする者が定款を作成しますが(会社法第575条)、株式会社と異なり、定款について公証人の認証を受ける必要はありません。出資は設立の登記の時までに履行し(第578条)、合同会社は設立の登記によって成立します(第579条)。登録免許税は、資本金の額に1000分の7をかけた額で、​6万円に満たないときは​1件につき​6万円と、株式会社より低く設定されています。

合同会社では、出資者は「社員」と呼ばれます。株式会社の株主が出資者として会社と一定の距離を置くのに対し、合同会社の社員は、出資者であると同時に、会社の構成員として経営に関わることが前提の形態です。

認証が不要で登録免許税も低い分、合同会社は設立の負担が軽い形態です。一方で、合同会社の出資者は「社員」と呼ばれ、原則として全員が業務の執行にあたる立場であり、株式を発行して広く出資を募る仕組みはありません。事業の規模や将来の姿に合わせて選ぶ形態です。

個人事業主との違い

個人事業主と会社のもっとも大きな違いは、法人格の有無です。会社は登記によって法人として成立し、契約や財産の主体が、事業主個人とは切り離されます。株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とする有限責任です(会社法第104条)。個人事業主にはこの区切りがなく、事業上の債務は個人が負うことになります。

開業の手続そのものにも差があります。個人事業主には、会社のような設立登記は必要ありません。事業を始める際の手続の負担は、会社を作る場合に比べて軽いのが通常です。その代わり、法人格による区切りは得られません。

社会保険にも違いがあります。日本年金機構の案内によれば、株式会社などの法人の事業所は、事業主のみの場合を含めて、健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所とされています。これに対して個人の事業所は、常時​5人以上の従業員を使用する場合に適用事業所となります(農林漁業やサービス業など、一部の事業を除きます)。税金についても、会社は法人として法人税の対象となり、個人事業主は個人として所得税の対象となるという、納税する主体そのものが異なります。

税金の申告の姿も変わります。個人事業主は、事業の所得を個人の所得として、所得税の確定申告を行います。会社になると、法人としての法人税の申告と、経営者が会社から受け取る役員給与についての所得税の申告とが分かれます。お金の流れが「事業主個人」から「法人と個人」へ分かれることが、会社を作ることの実感に近い変化です。

設立の形態選びでは、費用だけでなく、その後の運営の姿を考えることも大切です。株式会社は、株式の発行によって将来の資金調達の選択肢を持ちやすい形態であり、合同会社は、少人数で意思決定の機動力を保ちやすい形態です。どちらが正解ということはなく、事業の計画に合った器を選ぶことが出発点になります。

会社の設立は、定款、認証、出資、登記という、決められた手順の積み重ねです。資本金​1円からでも設立できるとはいえ、登録免許税などの費用と、法人になることで生じる義務は現実のものとして伴います。個人事業主との違いを、法人格・責任・社会保険・税金の面から見比べることが、形態選びの出発点になります。

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